日本が誇る潜水艦、その販売合戦の裏側

潜水艦の実力は何で決まるのか?

「潜水艦を販売する」というのは、語感的に何かそぐわないものがありますが、基本的なところは、皆さんが商品を購入する場合と変わりません。購入、あるいは導入する側は、安全保障戦略または海軍戦略にもとづき、「どのような潜水艦が欲しいか」を明らかにします。

これを受けて、「受注したい」と思う企業は、「どのような潜水艦を」「どのような価格で」「どのような方式で」提供できるかを提案します。「どのような方式で」と言うのは、「受注側で建造し、完成品を引き渡す」のか、ライセンス方式といって「図面を提供し、技術指導をしながら購入国の造船所において建造する」のか、ノックダウン方式といって「コアになる部分は輸出側が制作し、購入側で組み立てる」のかということです。

どの方式を採用するかについては、「購入側の国内造船工業界の育成」と「輸出側の技術情報の保全」という、対立する問題が存在します。オーストラリアでの造船工業界の反発は、このことを象徴しています。

潜水艦は少しでも長く潜れるように進化してきた

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「どのような潜水艦を導入するか」を決定する過程は、先ほど「基本的には皆さんが商品を購入する場合と同じ」と述べました。食材であれば試食、衣服であれば試着、あるいは乗用車であれば試乗などによって対象商品を評価することでしょう。

潜水艦の場合、まさか試食ということはできませんし、試乗もなかなか困難です。せいぜい、停泊中の潜水艦を視察することができるくらいでしょう。もし、試乗できたとしても、1日くらいの行動では、潜水艦の性能を把握することは難しいでしょう。

それでも潜水艦を評価する基本的な要素はあります。最も重要な要素は、その潜水艦が「『潜水』艦であるか?」 ということです。「何を当たり前のことを……」と思われるかもしれませんが、実はいちばん大切なことなのです。

潜水艦のキーワードは隠密性です。人類が月面に到達してから間もなく50年が経とうとしています。しかし、海の中の解明はなかなか進んでいません。その「海の中に潜む」ことが潜水艦の最大の武器なのです。

ドイツのUボートや日本の伊号潜水艦のような第2次大戦までの潜水艦は、水上航走が基本で、敵の艦船を攻撃(潜水艦では襲撃と言います)する時などだけ潜航していました。このため、第2次大戦までの潜水艦は、潜水艦とは呼ばれていましたが、実は「可潜艦」――つまり「潜ることのできる船」だったのです。したがって、船体の形も水上の艦船に近いものでした。

しかし、潜水艦はレーダーなどの発達に対抗するため「水中にいる状態が普通」というように進化し、いまでは港と潜航する地点を往復する間だけが水上航走で、行動期間のほとんどすべてを水中で過ごします。船形も、水上での運動性能を犠牲にしてでも水中での運動性能の向上を目指してきました。その究極の形が原子力潜水艦です。 

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