事業の成否は、無謀な突入や、手続きばかりはキチンとしている「形だけの一貫性」ではなく、常に変化する状況と向き合う柔軟性にかかっています。そもそも、撤退などの話ができない状況自体、その事業を推進するチームへの大きな「危険信号」なのです。
失敗責任から逃げると「追い銭」は高くつく
地方活性化では、大層な計画を立て、膨大な税金を投入して、公共施設や商売施設開発を行ったり、公共交通網を再整備したり、さらにイベントなどを開催したりしています。
しかしながら、それらの事業が全く思うような成果も出せず、さらに経済的にも自立しないままに常に公的財源に依存しつづければ、活性化事業はそのまま自治体の財政負担になってきます。
悪い例を紹介しましょう。ある地方の有力都市が「コンパクトシティ」の名の下に整備した施設は、事業費として当初約180億円かかったものでした。
しかしその後、施設の経営が失敗だったと事実上判明した後も自治体が支援をし続け、投入した予算は、施設完成後から今に至るまでで合計200億円を優に超えてしまっています。
つまり当初費用以上にさらかにおカネをかけてしまったのです。しかも、再建計画を何度も立てなおしていますが、計画は軒並み未達を続け、出口が見えない状況になっています。
このように、地域の活性化事業に最初から撤退条件をつけておかないと、潰すと責任問題になるので、関係者は皆、誤魔化そうとしていきます。結局、再建計画などといっても、ほとんどの場合、根本治療ではありません。ズルズルと小さな予算を逐次投入するという「当座しのぎ」を繰り返し、気づいてみると膨大な損失に膨れ上がってしまうのです。
しかも、そうしているうちに、事業の担当者なども入れ替わってしまい、時には市長などのトップも選挙で交代、となり責任問題はいずこかへ押しやられます。事業の一部を任されていた民間業者も「私たちは、単に行政から依頼を受けて動いただけです」みたいな方ばかりになります。結局、こうした不幸な地域活性化の事業は責任者が不在のまま、誰も撤退の意思決定をせず、惰性で続けられてしまうわけです。
では、どうすればいいのでしょうか。本来は「ある一定の段階」を超えたら、過去の投資については「サンクコスト(回収不能費用)である」と、諦める必要があるのです。つまり、いったんすべてをリセットしたうえでなければ、経営支援などしても効果はありません。計画の初期から撤退することを誰も決められないプロジェクトは、失敗しても誰も撤退を決められず、地域からヒト・モノ・カネをだらだらと奪っていく危険を常にはらんでいるのです。
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