撤退要件は危機的な状況になればなるほど、当事者の判断が鈍くなってしまいます。
撤退要件は絶対に最初に定めなくてはなりません。誰かがそのときどきで決めるのではなく、ルールで定めなくてはならないのです。もし属人的な形でプロジェクトが開始され、初期に撤退要件を決めていない場合は、前述のように、首長も担当者も、「自分の任期の間だけは逃げ切ろう」と、無駄なおカネをつぎ込みがちなのです。
今、地方創生でもKPI(重要業績評価指標)の設定やPDCAサイクルを通じた検証などが叫ばれていますが、併せて決めるべきは撤退要件です。
どの程度目標を下回ったらプロジェクトを中止するのか。これを明確に最初に定め、取り組むことがすべての基本です。誰かが危険になったら決めてくれる、などという希望的観測はやめなくてはなりません。特に縮小社会の場合、一つのミスが地域の命取りになりかねないのです。
撤退戦略とは、「未来につながる前向きな話」
われわれが地域で仲間と共に事業に取り組む際にも、時間軸でのリミット、資金軸でのリミットを最初に大枠定めます。「これ以上時間をかけても事業が実行できなかったら中止しよう」「この額以上に損が出たら中止しよう」といった具合です。
あらかじめ決めておけば、万が一これらの撤退要件にひっかかる状況になれば、誰も反対せず、「ここらへんでいったん考えなおそう」ということが、ためらうことなく言い出せます。でないと「まだもう少し頑張ろう」とか「もう少しだけ投資すればどうにかなる」といったように、損切りする、しないで論争になってしまいます。
地域活性化事業で重要なのは、成功することと共に、大きな失敗をしないことです。もし大きな失敗をしたら再挑戦することは困難になります。地域での事業は、常に「挑戦と失敗の繰り返しをどれだけできるか」にかかっています。
挑戦して、まずくなったらいったん手仕舞いして、再度やり方を変えて挑戦してみる。この繰り返しを続けられるようにするためにも、大きな失敗はしてはいけないのです。初期に撤退条件を話すことは決して後ろ向きな話ではありません。未来につながる前向きな話なのです。
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