東京本社を福岡に移転 ケンコーコムの乾坤一擲

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東京本社を福岡に移転 ケンコーコムの乾坤一擲

電力不足、余震、放射能への懸念……。震災後の東京は三つのリスクを抱えることになった。そうしたリスクに備え、東京脱出を図る企業がある。健康食品などをインターネットで販売する、オンライン上のドラッグストアのケンコーコムだ。

同社は3月の震災直後、東京都赤坂の本社機能を福岡市天神に移転することを決定した。5月16日、正社員108人のうち、社長を含めてマーケティング、管理部門など約20人が新オフィスで勤務を開始した。

後藤玄利社長(44)は「電力不足で生産性が落ちている東京に、本社機能を一極化する必要性は低い」とし、今後は福岡がメインの2極体制をとる。7月末には東京オフィスのフロア面積の6割を解約する予定だ。

震災を機に、多くの企業が取引先や生産拠点を分散するなど、リスク管理の機運は高まったが、東京本社の機能移転を実行した上場企業はケンコーコムだけだ。

震災後、週明けの3月14日月曜日。ケンコーコムは“震災対応”に大わらわだった。消費者から注文が殺到、ミネラルウォーター、紙おむつ、乾電池、簡易トイレの売り上げが急伸。注文は通常の3倍近くにハネ上がった。

ただ、宇都宮の物流センターは地震による商品落下で稼働できず、仕入先とも電話が通じにくい。平時以上に人手が必要な状況だったが、計画停電で電車が動かず、8割の社員しか出社できなかった。

後藤社長は「当社自身に、不測の事態で必要とされる“ライフライン”の役割があると認識すると同時に、電力不足の中、東京に本社機能が一極化しているリスクを思い知った。余震や放射能から社員を守り、事業継続を確保することも重要と感じた」と振り返る。

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