東京本社を福岡に移転 ケンコーコムの乾坤一擲

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 リスク分散先として候補に挙がったのが、西日本の物流センターがある福岡だ。後藤社長は大分県を地盤とする伝統薬メーカー創業家の長男で、地の利もある。3月24日には早々と、天神にオフィスを確保した。初年度は福岡市が企業立地促進交付金として、賃貸料を一部負担する。

震災以前から「通販企業の当社は本社を東京に構えなくてもいい」と後藤社長は考えていたという。実際、ジャパネットたかたなど、九州に地盤を置く通販企業は多い。

噴出した家庭の事情 難しい社員対応

設立当時はネットなど革新的なビジネスができる人材を集めやすいと判断して東京に本社を置いたが、「ネットが普及した今、東京でなくても人材獲得に問題はない。大企業が無数にある東京より、福岡のほうがプレゼンスは高くなる。3月以降、採用募集に500人以上の応募があった」(後藤社長)ことで、人材面での不安は消えた。

本社移転費には福岡オフィスの賃料、社員の引っ越し代など約5000万円を計上。2010年度に2・4億円の営業赤字を出した同社には、少ない額ではない。しかし、「今でなければ、これから先いつまで経ってもできない」(後藤社長)と、サーバーのクラウド化などとともに、移転を決めた。

一方で社員は驚き、戸惑った。3月25日、全社員の前で社長が説明したが、質問は一つも出ずに終わった。しかし、その後、「全員が福岡に行かなくてはいけないのか」「行かないとどうなるのか」と、人事部に質問が次々と寄せられた。

「基本的に異動は業務命令。指命された社員は行かざるをえない」(人事採用担当・小山浩美マネージャー)。

ただ、すべての社員が福岡に異動するわけではない。営業や東京の企業と取引する業務の社員に加えて、「おのおのの事情で東京に残らざるをえない社員」もいる。結局、全社員の半数以上が東京に残ることになりそうだ。

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