原発再稼働を阻む「壁」 ストレステストの矛盾
安全性の追求が新たな不安を招きかねない。
政府は7月11日、定期検査中の原子力発電所の再稼働について、統一見解を発表した。今後、各原発で「ストレステスト」(耐性調査)を実施し、稼働の可否を判断する方針だ。「決して思いつきでなく、安全と安心の観点からたどり着いた結論」。菅直人首相は発表翌日、こう釈明したが、唐突感は否めない。
全国54基ある原発のうち、稼働しているのは17基にすぎない。東京電力福島第一原発の事故以降、再稼働に地元の理解が得られない例が続き、電力供給は綱渡りだ。各電力会社は、経済産業省原子力安全・保安院の指導の下、緊急安全対策を実施。6月18日には海江田万里経産相が「安全宣言」に踏み切った。
佐賀県玄海町ではいち早く、九州電力玄海原発2、3号機の再稼働に合意。海江田大臣自ら古川康知事を訪れ、安全性をアピールした矢先だった。そこに官邸から「待った」がかかった格好だ。
一次○でも二次×なら…
ストレステストとは、地震や津波などにどの程度まで“耐えられるのか”、その限界を測るのが目的だ。
今回の統一見解でまず「一次評価」の対象になるのは、少なくとも現在定検中の原発13基とみられる。安全上重要な施設が設計上の想定を超える事象に対し、どの程度の安全余裕度があるかを評価。無事クリアし、地元自治体が同意すれば、再稼働に近づく。ただしその後の「二次評価」では、あらためて全原発を対象に総合的な安全評価をする方針で、ここで問題が見つかれば、運転中でも停止する可能性がある。
評価は保安院だけでなく、内閣府の原子力安全委員会が妥当性を確認することで、より安全性を担保できるとする。が、具体的な項目や評価基準は保安院が策定中とし、現時点で決まっていない。