爆速成長を続ける台湾発AI企業「エイピア」の正体 日本で2021年上場、台湾人CEOはハーバード博士

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そこから始まったマーケティング領域の事業が、現在まで続くことになる。2012年に台湾でエイピアを立ち上げると、日本や韓国などアジアを中心にビジネスを拡大させていった。

現在日本のトップを務める橘浩二氏は、野村証券やDeNAを経て2020年にエイピアに入社した。橘氏は、参画した当時を「日本のスタートアップは、グローバル展開にはどこも非常に苦労しているのに、当時はアジア圏全域での展開に成功していた。面白い会社だと思った」と振り返る。

上場先として日本を選んだ理由について、ユー氏は「科学的に、客観的な要素を考慮して決めた」と淡々と話す。

アジアを拠点に海外展開を進める同社にとって、台湾の5倍以上となる人口規模を擁し、デジタルマーケティングも盛んな日本市場は魅力的に映った。「世界的にも大きな市場なので、たくさん投資家がいる。(上場の)ルールも明確でクリアだ」(ユー氏)。

他の事業アイデアも「いろいろある」

エイピアは今後、さらなる着実な成長路線を描いている。

2024年12月期は、主力製品以外の拡販やAIのアルゴリズム強化などに向けて約40億円を先行投資しつつ、売上収益は344億円(前期比30.6%増)、営業利益は20.9億円(同2.6倍)を見込む。ユー氏は「われわれはまだまだ成長フェーズなので、リソースを集中して1つ(マーケティング)にフォーカスする」と強調する。

科学者としてのユー氏は、将来的なAIの可能性についても熱弁する。

「私が今AIを使っているのはモバイルとインターネットだが、今後(AIの)計算にかかるコストが安くなると、AIがあらゆるものに組み込まれる時代がやってくる。例えば、AIを組み合わせることで、自分の体勢を変えるだけで、(上に置かれている)ボトルやペンが適切な場所に移動する賢い机のようなものを考えてほしい。業界全体にとっても、会社にとっても、人間の想像をはるかに超えるような非常に大きな事業の機会が広がっている」

ユー氏が描くAIが汎用的に広がる未来。具体的には明かさなかったが、マーケティング以外の事業アイデアも「頭の中につねにいろいろある」。

もう一段の成長を達成し、そのアイデアを実現する日はやってくるのか。科学者の今後の挑戦は、AIビジネスの将来を占う試金石になりそうだ。

茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞東京本社の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、ITベンダー業界を中心に取材。情報通信、メディア、都市といったテーマに関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んでいた。

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