爆速成長を続ける台湾発AI企業「エイピア」の正体 日本で2021年上場、台湾人CEOはハーバード博士

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起業を思い立つきっかけになったのは、ある日、車のハンドルを握って運転している時のことだった。長く自動運転を研究してきたのに、「まだこうして自分で車を運転しているじゃないかと、ふと気がついた。AIを使って実際に世の中にインパクトを与える仕事がしたいと考えるようになった」(ユー氏)。

Appier Groupのチハン・ユーCEO
Chih-Han Yu(チハン・ユー)/1979年生まれ。国立台湾大学を卒業後に渡米。AIの研究者として、四足歩行ロボットや自動運転車の開発に携わる。スタンフォード大で修士号、ハーバード大で博士号を取得。2012年にエイピアを創業。世界経済フォーラムが選出する2016年度の「ヤング・グローバル・リーダー」の1人に選ばれる(記者撮影)

アメリカで研究生活を送っていた台湾出身の仲間とともに、2010年頃からビジネスを始めた。もっとも、AIで起業するといっても、当時は今のようなAIブームが訪れるはるか前。「AIは技術としてはあっても、それをどこにどう使っていいかわからなかった」という。

当初ユー氏が考えたのは、今でいう仮想空間メタバースでの活用だった。AIで利用者本人と同じような動きをするアバターを作り、コミュニケーションを取れるサービスを構想した。しかし、ゲーム会社に売り込んでもまったく関心を持たれず、月給は1人約10万円という悲惨な状態に陥る。

ゲーム会社からの提案が転機に

途方に暮れる中、あるゲーム会社からの提案が、大きな転機をもたらすこととなる。「そんなにみんな頭が良いのに、なんでワケのわからないものを作っているの。それなら顧客の好みに応じてゲームをおすすめするような、レコメンデーションエンジンを作ってくれないか」。

「メタバースで新しい世界を作ろう」と息巻く研究者からすれば、地味な仕事だが、お金もない。言われるがまま要望のエンジンを作ると、たった1日かけただけで、顧客が使っていたサービスに比べて広告のクリック率を2倍に向上させることができた。

相手も驚いたが、それはユー氏にも天啓を授けた。「あっ、ここにハマるんだ」。AIが、どうビジネスに結びつくかについて気づいた瞬間だった。

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