東京でも感染者が見つかった「はしか」どう防ぐ? 少ないウイルス量でも感染して発病する可能性
天然痘は、いま世界で広がっている「M痘(mpox)」のヒト版で、ヒトにしか感染しない。1980年にWHOから撲滅宣言がなされたが、かつては世界中および日本でも大流行を繰り返し、死亡率が30%と高く恐ろしい疫病であった。
天然痘は体中の皮膚に、ニキビのように膿をもったブツブツができ、その汁から感染する。その汁に触らなければ、隣にいても感染しない。また、発病して天然痘とわかる症状が出てからしか他者に感染しないため、隔離が容易で、周囲にいた人たちに種痘という有効なワクチンを実施すれば感染は広がらない。だから感染をコントロールできたのだ。
麻疹は天然痘と同様、ヒト以外には感染しない。ただし、無症状のうちからウイルスを排出し、空気感染でどんどん広がるため、麻疹患者を隔離しても封じ込めることはできない。どこでウイルスに遭遇するかわからないので、社会の全員がワクチン接種を受けるしか有効な対策がないのだ。
日本でも大流行が起きても不思議はない
「令和4年度麻疹風しん定期予防接種の実施状況の調査結果について」(国立感染症研究所)によると、2022年の麻疹ワクチン接種率は1回目が95.4%、2回目が92.4%だ。1回目のワクチン接種率は、半分以上の道府県で95%を下回っており、2回目で95%を達成しているのは香川県のみだ。
「麻疹の抗体保有状況―2022年度感染症流行予測調査(暫定結果)」では、発症予防に十分な抗体を有している人は85.7%にすぎない。これはサンプル集団での値であり、実際にはより低いと考えられる。日本全国では1700万人もの人が麻疹にかかりうる状況であり、だからこそ麻疹感染者が増えてきているのだ。
いま日本で入手可能な麻疹含有ワクチンは、MRワクチン(麻疹風疹混合弱毒生ワクチン)だ。ただし、麻疹流行の報を受けて、すでに流通が逼迫している。なぜならば、子どもが1歳と就学前に受ける定期接種を確実に行うことが将来的な麻疹コントロールの礎であり、その分のワクチンを優先的に確保しなければならないからだ。
医療機関によっては、MMR(麻疹風疹おたふくかぜ混合弱毒生ワクチン)を個人輸入して提供している場合がある。ホームページなどでワクチンの取り扱いを確認して、早めにワクチン接種を受けるといいだろう。
コロナ禍で公費での接種の機会を逃した子どもたちについては、キャッチアップ接種も公費で受けられるようになることを願う。
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