名取市の特別養護老人ホーム、地域密着の財産を元に「再建一番乗り」を目指す

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名取市の特別養護老人ホーム、地域密着の財産を元に「再建一番乗り」を目指す

漁港の朝市で有名な宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区では、東日本大震災の津波による被害で、多くの人命や家屋が失われた。特別養護ホーム「うらやす」にも大人の背丈を上回る高さの津波が押し寄せ、利用者と職員合わせて40人以上が犠牲になった(上の写真は、被災した高齢者が一時的に入所する老人保健施設「春風のころ」)。

 うらやすの経営母体である社会福祉法人みずほの森精一理事長(右写真)は、うらやすの近くに森内科クリニックを構え、内科医として地域住民を22年にわたって診察してきた。
 
 閖上地区では特養ホームのみならず、認知症高齢者グループホームやケアハウス(軽費老人ホーム)、デイサービス(通所介護)センターなども運営。高齢者が多いこの地で、地域密着型の医療・介護システム作りに取り組んできた。

震災でそうした努力は一瞬にして灰燼に帰した。平屋建ての特養ホームおよび3階建てのケアハウスとも津波の被害が大きく、元の場所での再建は不可能。建物および機械類の被害総額は14億円にも達した。
 
 にもかかわらず、森氏は動じる様子がない。「残った職員と力を合わせ、どこよりも早く復興させてみせる」と意気込む。

 むろん、大きな課題がいくつも待ち構えている。まず第一に、「被災した施設では、収入の大幅減が不可避になっている」(特養ホームうらやすの佐々木恵子施設長:右写真)。「特養ホームの長期入所では震災前の3分の1に、デイサービスは再開できていないので限りなくゼロ。グループホームおよびケアハウスも収入は半分に落ち込む」と佐々木氏は説明する。5月末までは震災前の9割の収入が保障される「概算払い」の特例が設けられていたが、6月の月間収入は大幅減となったもようだ。

一方、被災した施設から利用者を受け入れた系列の2施設(特養ホーム「春の森から」および老人保健施設「春風のころ」(ともに仙台市))では、利用者数、職員数とも急増。「春の森から」では3月11日時点の利用者61人、職員44人から、6月14日にはそれぞれ94人、96人に達した。受け入れ側の施設で職員が大幅に増えたのは、元の施設で働いていた職員の雇用を維持したためだ。当然ながら人件費負担は重い。

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