プラゴミの"ダイエット"ができないジレンマ 環境問題に意識が高くても行動を伴うのは困難

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かといって、家庭や個人が自由奔放に炭素依存型のライフスタイルを続ければ、脱炭素目標の達成が遠のくばかりか、快適な住環境や健康が維持できなくなる可能性もある。

筆者が研究の一環として実施した横浜市民300人(20歳以上70歳未満)を対象とした環境に関するアンケート調査(オンライン形式)では、最近の異常気象を背景に将来の居住環境に関しては、8割程度の回答者が不安を持っていることが確認できた。

健康への影響について、ある回答者からは「私はアトピーで昔から暑さに弱く、現在の温暖化には本当に悩むところです」とのコメントが寄せられた。暑い日には、より多くの汗をかくことで皮膚の乾燥を引き起こし、かゆみや炎症を悪化させる場合もあるという。

一方、温暖化に懐疑的な回答者は1割強存在し、「デマを流すな」などのコメントもあった。

関心と行動の不一致

いずれにしても同調査を通じ、8割程度の回答者が程度の差はあれ、環境問題に関心を持っていることがわかった。

問題は、関心の度合いが、必ずしも環境に配慮した行動と一致していない点である。日常生活で何らかの環境に配慮した行動をしていると回答した人の割合は約6割と、関心の割合との間で開きがある。

「高い関心」を持っていると回答した人(300人中28人)ですら、積極的な行動をしている人はわずか5人で、それ以外の人の行動はバラツキが見られる。意識が高くても、必ずしも行動が伴っているわけではない。

高い関心を持っている人の環境配慮行動の程度を表すグラフ
環境問題に「高い関心」がある人でも、環境に配慮した行動を取れていないと自覚している人たちが一定数いる(画像:筆者によるアンケート結果から作成)

社会心理学の分野では、関心と行動の間の不一致の原因についてさまざまな研究がされ、その要因として、知識や経験の不足、費用負担能力や実行可能性の有無などが指摘されている。

そのほか、仕事や子育てによる多忙、体調不良、肉の中で最も環境負荷が高い牛肉などを食べる欲求を抑えられない、など、さまざまな要因も考えられる。

誰もが、両者の乖離をなくすことは難しいが、ダイエットのように粘り強く続けていくことで、縮小させることはできるはずだ。

一方、温暖化の進行が加速していることを踏まえると、補助金などを活用しながら、CO2削減効果が大きいゼロエネルギー住宅なども併せて検討していくことも必要だろう。

伊藤 辰雄 ジャーナリスト

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いとう たつお / Tatsuo Ito

大学卒業後、ロイター通信社、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで記者として、経済・金融政策、金融市場を中心に30年以上に渡り取材。現在は、フリーランス・ライターとして環境分野を中心に取材執筆するほか、会社四季報で食品関係の企業を担当。2024年3月上智大学大学院・地球環境学研究科修了(環境学修士)

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