「派遣法改正」が生む、IT産業への歪んだ作用 多重下請け構造の中で懸念されるのは?
これまでにIT業界内で指摘されている派遣法改正の影響は、
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1.資本金やオフィス面積等の要件と許認可の手続きが特定派遣の届出で済んでいたソフト会社の経営を圧迫する
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2.中小ソフト会社のM&Aが進む
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3.中小ソフト会社は人材教育の意欲を削ぐ
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4.「派遣業」のレッテルで新卒採用が難しくなる
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5.派遣に依存しているシステム開発に支障が出る
――などだ。
資本金が1000万円で事業所が3か所の場合、1000万円を増資したうえ4500万円の現預金を蓄え、オフィスを借り増し・借り換えとなれば、負担は小さくない。費用対効果を見て、事業所を廃止するケースもありうるだろう。結果として派遣型ITサービス事業者の経営統合ということになる。創業経営者の後継者問題と併せて考えると、派遣法改正がM&Aのきっかけになるかもしれない。
人材教育の意欲という点ではどうか。上限3年に達した派遣技術者が派遣先に雇用されることを想定しての懸念だが、これは案じるに当たらない。発注者(派遣受入側)から見れば、「代わりはいくらでもいる」し、IT派遣就業者の大半はその程度の仕事しかさせてもらってない。それに実態として、就業者の技術教育に予算を投じている事業者がどれほどあるだろうか。
実は「どん底」なことに気がついていない
「新卒採用が難しくなる」、「システム開発に支障が出る」という意見については、可能性があるかどうかぐらいで、おそらく実態はこれまでと変わらない。ITサービス業ではひところ「3K」「4K」と自虐的な語呂合せが流行ったが、平均給与は全産業平均より上にあるし、就業者数は増加を続けている。「デモ」「シカ」IT技術者を受け入れることができるほど、業界は甘々。これから開発に支障が出るのではなく、実は「どん底」に落ちていることに気がついていないだけなのだ。
いずれにせよ、上記の指摘は表面的なことばかりで、突き詰めていくと「どうすれば派遣法に抵触せず、より簡易な手続きで実質派遣を継続できるか」に行き着くだろう。ITサービス事業者ばかりでなく、IT派遣技術者自身やIT派遣受入事業者のモラルダウンがいま以上に進んだとき、企業のITガバナンスやITセキュリティはどうなるのか、この国の国際的な産業競争力は維持できるのか、社会・経済の変革を担えるのか。そっちのほうが心配だ。
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