「派遣法改正」が生む、IT産業への歪んだ作用 多重下請け構造の中で懸念されるのは?
労働者派遣法の改正案が6月19日、衆院本会議を通過した。民主党や共産党など野党からの「反対」が表明されたが、与党の賛成多数で法案は可決され、参議院に送られた。
過去2回、廃案となっていただけに政府・与党は今回の成立に意欲を燃やしている。24日までの会期を延長、今国会での成立を目指す方針だ。参議院でも与野党の激しい攻防が予想されるが、議席数で過半数を握る与党の賛成多数で法案が成立する公算は大きくなっている。その場合の施行は2016年10月となる見通しだ。
「専門26業務」も3年が上限に
現行の派遣法はソフトウエア開発や秘書、財務処理、書籍等の制作・編集などの特殊な技術や知識が必須となる「専門26業務」の派遣労働者を除いて、派遣期間を最長3年と定めてきた。今回の改正案が成立するとこの期間上限が事実上撤廃。一方、これまで期間の制限がなかった専門26業務は、最長3年と定められる。
安倍晋三首相は19日の衆院厚生労働委員会で、改正派遣法について「派遣を選ぶ人の待遇改善を進め、正社員を希望する人には支援する」という趣旨の発言をして、改正に理解を求めた。これについて野党や労働団体などから、「派遣就労の固定化が進む」「技術やノウハウの蓄積・継承を難しくする」「社会のセーフティネットを弱体化させる」「勤労若年層のモラルダウンや貧富の格差拡大を招く」などの批判が渦巻いている。法施行後に首相のいうような「改善」となるか、反対派の主張する「改悪」となるかは予断を許さない。
現行の派遣法は専門26業務について、派遣元企業が常時雇用(正社員)の技術者を派遣する場合は、厚生労働省への届出をしていれば事業を営めていた。これが特定労働者派遣だ。対して改正案が成立すると、特定労働者派遣は廃止。厚労省の許認可を得ることが必要で、登録型の技術者を派遣する形態である 「一般労働者派遣」に統合される。
これをIT業界に絞って検証してみたい。指定が解除される特定26業務のなかで、最大の就労者数を抱えているのはITサービス業だからだ。特定業務指定を外される受託型ITサービス事業者は、改正派遣法の施行から3年以内に「派遣業」の許認可を得なければならなくなる。許認可には純資産2000万円(うち1事業所当たり事業資金として1500万円の現預金)、事務所20㎡以上の要件が必須で、何ごともなければ申請後2~3カ月で許認可が下りる。
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