民主主義幻想が消えた「西洋」が没落する歴史的理由 『西洋の没落』の著者、エマヌエル・トッドの議論
この書物の最後の方の11章に、なぜ世界の残りの国はロシアを選んだのか」という章がある。その中に地図が掲載されている(307ページ)。そこには、ウクライナ戦争直後の4月7日、国連総会でのロシアに対する制裁決議案に賛成した国と、反対した国が、区分されている。
断固たる非難決議を支持した国と、それ以外の国を分けると、圧倒的に多くの地域が、この決議案に積極的に賛成しているのではないことがわかる。アメリカとEUそして、日本などの一部の国を除いて、多くは、この非難決議案に、同意していないのである。
西欧を支持しなかった国の多さと西欧の誤解
ここからわかることは、いわゆる西欧(ここでは東欧も含まれる)は、人口にして12パーセントであり、残りの88%の非西欧人は西欧と同じようには考えていないということである。
その理由は、非西欧世界の人々にとって、グローバル化とは再植民地化の過程であり、非西欧には西欧とは違う価値基準が存在し、それが西欧と足並みをそろえることを拒否しているからである。
もちろん、ロシア人が彼らに好まれているわけではない。ただロシアは自らの価値を世界の価値だと喧伝もしないし、価値観を押しつけもしていないから、非西欧にとって、それは付き合い安い相手にしかすぎないのだ。
ウクライナ侵攻に関して西欧が盛んに主張していたキャッチフレーズに、「民主主義と自由を守るための闘争」だというものがあった。しかし、トッドは、それに対して、それでは西欧には本当に民主主義国というものあるのか、本当に自由があるのかという問いを発している。
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