都の学校カウンセラー「250人雇い止め」の衝撃 学校や保護者から評価高く、経験豊富なSCが…

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子どもはすでに独立し、夫もまだ働いているという。それでも「将来への不安はぬぐえません。先日、生命保険を解約しました」と打ち明ける。

勤続9年の神谷育江さん(仮名、30代)は昨年子どもが生まれたばかり。オンラインで話を聞いたとき、画面の向こうから「あばばば」という赤ちゃんの喃語(なんご)が聞こえてきた。学校からの評価はオールA。雇い止めを報告した学校関係者からは「理由は、昨年神谷さんが産休(妊娠出産休暇)を取ったからではないか。それしか考えられない」と指摘されたという。

神谷さんの勤務先は2校なので、雇い止めによる減収は約340万円。共働きで年収は夫とほぼ同水準だったため、家計への打撃は大きい。住宅ローンに教育費、老後に備えた貯蓄――、考え出すと頭が痛くなる。「これが“赤ちゃんファースト”をうたう自治体のやることなんでしょうか。部品を外して新しいものと換えるかのような理不尽なことを行政が率先してやっている」と憤る。

「圧迫面接があった」

取材で話を聞いていて、もうひとつ気になったのは、複数のSCが公募の際に「圧迫面接があった」と訴えていたことだ。

あるSCは「教師との情報共有も仕事のひとつだという回答をしたところ、面接官から『SCって、共有と傾聴以外に何ができるんですか?』と鼻で笑われました。面接中、傾聴という言葉は一度も使っていないのに……」と話す。面接官は2人で、時間は15分ほど。扉を閉めた瞬間、室内から笑い声が聞こえてきたことにも、違和感を覚えたという。

答えている最中に「もう結構です」「簡潔に!」「巻きで話してください」と手のひらを向けられ、強い口調で遮られた、こちらが答え終わる前に次々と質問を畳みかけられた、という証言も複数あった。また、「子どもが不登校になったらどうしますか?」などあいまいな質問が多く、「完全に不登校なのか?」「不登校になりつつあるのか?」「保健室登校はできているのか?」など、SC側から設定を確認しなければならない場面がたびたびあったという。

別のSCは「質問に質問で返さなければ答えようがない質問が多く、(面接官は)SCの仕事のことを知らないんだなと思いました。それなのに面接中にメモも取らない。あらかじめ落とす人を決めていたのではないかとも感じました」と振り返る。

都教委によると、面接を担当したのは学校勤務の経験のある都職員で、統括指導主事もしくは指導主事。基本的にSCの経験者はいないという。

「あの子のことをどう引き継ごう」「3月いっぱいで終わりですと伝えたお母さんから『あなたにしか話せないのに』と泣かれました」――。取材で出会ったSCたちは全員、何よりも先に子どもたちや保護者のことを気にかけていた。SCの登校は原則春休みに入るまで。やりきれない思いを抱えながら最後の登校を迎えつつある。

藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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