鳥山明さんの死を台湾人が惜しむ現代史的背景 1980年代からの民主化の過程に「七龍珠」が輝いた
そのような情報統制下の環境で、台湾の人々の民主化への希求は、経済成長とともに一段と強まっていく。
この時期、台湾の民主化の歴史に欠かせない1人の言論人がいる。台湾の民主活動家でもあり、「100%の言論自由」「私は台湾独立を主張する」との発言が歴史に残る、鄭南榕(1947~1987年)さんである。
自由に意見を言えない時代にあって、『自由時代』など政治雑誌を創刊し、言論や表現の自由、政治の民主化、そして台湾独立を主張し続けた。
戒厳令と検閲に抗した1人の言論人
1987年、政府が戒厳令を解除しても、中国国民党(国民党)の一党独裁体制による自由思想の締め付けが続いていることを批判。それにより1989年1月、当局の強硬逮捕に抵抗して籠城を始めるが4月7日、自分の体に火を付け焼身自殺した。
この時、強行突入に踏み切った警官隊を指揮したのが、2024年1月の総統選で国民党公認候補として出馬した侯友宜・新北市長だ。この事件は、侯市長が今でも民主進歩党(民進党)や人権派人士から非難される理由の一つになっている。
普通のマンションの一室だった当時の出版社の事件現場は、現在、鄭南榕紀念館となっている。火災跡の状態を残し、民主化の聖地として人々に受け継がれている。また、建物の前の通りは「自由巷(通り)」と名付けられ、命日は「言論の自由の日」に定められた。
このころ、台湾のエンタテイメントの世界でも当局による検閲が行われ、当局による「ろ過」を経た、遅れたコンテンツが人々の間で伝わっていた。しかし、これを劇的に変えたのがVHS、ベータビデオなどのAV機器であり、街中に出現したレンタルビデオショップや漫画ショップだった。
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