”復活”日本−−日中韓・造船三国志 【下】

不況が現実のものとなれば、日本の「秘密」も引っくり返る。需給が緩和すれば、厚板のスポット価格はヒモ付き価格に先行して下落する。韓国も賃金調整を進めるだろう。船主と造船所の力関係が逆転し、標準船に満足しない船主が個別仕様を要求するようになったら、設計者不足の日本は対応できない--。

海外進出には懐疑的な三井造船。が、その三井造船のディーゼルエンジン部隊は中国と合弁のエンジン工場を立ち上げ、昨年末、1号機を送り出した。生産量は今年いきなり100万馬力、3年後に300万馬力に拡大する。国内生産量=500万馬力の8割の水準だ。「それでも足りない。どこまで行くか、見当もつかない」(三井造船・櫻井眞常務)。

韓国のエンジン大手、STXも大連に進出する。日韓の舶用機器メーカーが現地生産を拡大すれば、中国造船業のネックだった舶用機器の国内調達の壁も格段に低くなる。

現在も将来も、韓国の眼中に日本はない。韓国が意識しているのは、中国だ。「いずれ、中国がトップになる。どこまで遅らせることができるか」(曺氏)。中国・寧波でブロック工場を運営するサムスンは、中国の実力を“体感”している。「ブロックが造れれば、バルカーを造るのは問題ない。VLCCもコンテナ船でもそんなに差はついていない」。

常石の「軽」断トツ作戦 “孤高”三菱も決断

それでも、日本の造船所の大半は現状に自足している。が、迎撃体制を固める企業もないではない。国内5位の常石造船。すでに6年分の仕事量を確保し、14年の商談に入っている。突出して受注を積み上げるのは、神原勝成社長のリスク対策だ。「どこかで市況は反転する。今の船価で利益を確定しておきたい」。

常石は5年間700億円の投資を決断した。トラウマに取りつかれ、日本が忌避し続けてきた大投資。ただし、投資先は国内ではなく、フィリピンのセブ工場、中国の舟山工場だ。NACKSは50対50の日中折半出資だが、常石は主導権を持って(セブは80%、舟山は全額出資)海外展開する唯一の造船所である。

かつてIHIのイシブラス(ブラジル)を筆頭に大手も海外の造船・修繕事業に進出し、ことごとく失敗・撤退した。常石も60年代にニューギニア、80年代にウルグアイに進出し、一敗地にまみれた。大手と違うのはあきらめなかったこと。「失敗をノウハウに変えた。立地、治安、政府対策をどうするか。中国の今の工場も目星をつけたのは20年前」。

目指すのは「造船のスズキ」である。主力船種は、他の日本の造船所と同じバルカーだが、日本の「秘密」には安住しない。「バルカーは簡単に作れるが、本当に競争力のある会社はいくつある? スズキは軽で30年間もナンバーワン。軽には韓国も出ていけない。バルカーでシェアもコストも、世界断トツを狙う」。

そのために、セブに3本目のドックを建設する。国内大手の時間当たりコストは7000円、中手は5000円、そしてフィリピンは1000円だ。海外投資を加速すれば、国内マザー工場の負担が幾何級数的に薄まり、全体の競争力に磨きがかかる。神原社長が言う。「10年のスパンで見れば、国内マザー工場に中国の優秀な設計者を採用し、フィリピンの職長が国内工場で指揮してもいい。マーケットは世界なんだから」。

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