もうすぐ発表「アカデミー作品賞」候補を一挙解説 『オッペンハイマー』など、注目作がそろう

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『落下の解剖学』もフランス語のセリフに英語、ドイツ語をうまく取り入れたことでドラマに深みを与えていたが、大人のラブストーリーである『パスト~』も英語と韓国語が大きなモチーフに。もちろん両作の作品のベクトルは違うが、そうした共通点も興味深い。

『アリー スター誕生』で監督としての手腕を見せつけた俳優ブラッドリー・クーパーのNetflix映画『マエストロ: その音楽と愛と』はプロデューサーにマーティン・スコセッシとスティーヴン・スピルバーグが参加するなど、強力な布陣が話題に。

20世紀の偉大な音楽家レナード・バーンスタインの人生を描き出した本作で、主演のクーパーは特殊メイクでバーンスタインに顔を似せているが、その特殊メイクを手掛けたのは『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でアカデミー賞メイキャップ&ヘアスタイリング賞を獲得したカズ・ヒロ。彼を含む3名がメイキャップ&ヘアスタイリング賞の有力候補となっている。

カズ・ヒロ アカデミー賞
『マエストロ: その音楽と愛と』の特殊メイクを担当したカズ・ヒロは2019年に日本国籍を離れ、米国籍を取得している©A.M.P.A.S.

アカデミー賞のゆくえを占う指標として、毎年9月に行われているカナダのトロント国際映画祭で最高賞にあたる観客賞を受賞しているかどうか、といったところもそのひとつとなる。

近年の観客賞を獲得した作品はほぼ作品賞にノミネートされており、『グリーンブック』『ノマドランド』といった作品はアカデミー賞の作品賞を獲得した。

昨年の映画祭で注目の観客賞に選ばれたのはコード・ジェファーソン監督、ジェフリー・ライト主演の映画『アメリカン・フィクション』だ。

ステレオタイプの黒人描写に背を向けてきた売れない黒人作家が、ジョークのつもりでステレオタイプの黒人描写満載の新作を匿名で発表。こんなくだらない小説なんか誰も見向きもしないさ……と思いきやそれが一躍社会現象になり、あたふたするさまをブラックジョーク満載で描き出す。

架空の作家になりきるジェフリー・ライトの芸達者ぶりもユニークで、主演男優賞ノミネートも納得の名演。皮肉を利かせながらも鮮やかな着地点を見せるクライマックスも見どころとなっており、脚色賞への期待も高い。

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