子育て支援めぐり「連合と野党だけ」猛反発のなぜ 騒動の主役は「年金破綻論全盛時と同じ顔ぶれ」

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こども・子育て支援の安定財源の確保については、1989年の「1.57ショック」以来長く議論されてきたことである。そしてようやく2021年の「骨太の方針」の中で「安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討する」と書かれるに至る。

その後の検討の中で、大本のところで少子化の原因でもあり、かつ少子化緩和の便益を受ける既存の社会保険制度を活用し、そのことは、社会保険制度のよって立つ基盤をさらに強固にし、国民のみんなの生活を支えている社会保険制度の持続可能性を高めることになるという理念を確認し、そうした理念を共有する与党が、このたび2月16日に、法案を提出している。

財務省の財政制度等審議会でも、2020年秋の建議で、「賦課方式をとる我が国の社会保険制度の持続性の確保や将来の給付水準の向上につながるものであることを踏まえると、医療保険制度を含め、保険料財源による少子化対策への拠出を拡充するという考え方」が示されていた。

なぜ、こども・子育て支援の話と社会保険制度の間に連帯・分かち合いの仕組みとしてつながりがあるのかについては、次を参照してもらいたい。

社会保険が子ども・子育てを支えるのは無理筋か」(2023年7月28日公開)

人というのは一様ではなく分布がある。こども・子育て支援と社会保険制度の存在をつなげて考えるのは屁理屈だと言う者もいる。人は一様ではないので、そのように見える人もいるだろう。

人は一様ではないということは、次のように説明すればわかってもらえるだろうか。次は、医療消費に見る社会保険と民間保険の違いを説明するために作られた図である。

この図をみて、ある人は「家計と所得の医療サービス支出の関係をみると、(中略)アメリカでは所得と医療サービスの相関は高い。所得に応じて国民は多様な医療サービスを購入していることを示唆する」という文章を書いていた。この文章をみて、なるほど、アメリカの医療制度のほうが日本よりもよいのかと思う人もいるだろう。

対して、私は同じ図をみて、以前、次のように書いたことがある。「このことから、皆保険下の日本では医療の平等消費が実現されているのに、国民全般を対象とした医療保障制度をもたないアメリカでは、医療が階層消費化している」。この文章をみて、なるほど、日本の医療制度のほうがアメリカよりもよいのかと思う人もいるかもしれない。

医療制度に関して、アメリカと日本への評価は、理念、価値判断の違いから生まれるものであり、互いに互いを説得して見解を変えてもらえるような話ではない。そして、医療消費が所得に応じて階層化する医療制度の具体的な設計と、所得に関係なくニーズに応じて医療が消費される平等消費医療制度の具体的な設計は、背後にある理念を反映して180度変わってしまう。制度というものは、そういうものである。

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