IT企業から独立したエンジニアに起きた「悲劇」 フリーランスには様々なリスクがつきまとう

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■健康のリスク

長く安定的に仕事を続けていくために何よりも大切なのは健康です。フリーランスは、自分で仕事を獲得する必要があるので、体調を崩すとダイレクトに収入の低下につながってしまいます。会社員のような有給休暇もないので、自分自身でしっかりと健康管理をすることが大事です。また、これも「もし健康を害してしまった場合にどうするか?」という対策を考えておくことも必要です。

生命保険や傷害保険を整えておくとか、業務を分散しておくとか、重要な事項は記録簿を作っておくなどをしておくことも大事です。私自身は仮に自分が3カ月入院しても業務が停滞しないように同業者との連携や従業員への一部権限移譲や、緊急時の連絡先を整えておくなど、仕組みを考えています。

お金を増やすために日々行動することが重要

いずれにしてもこれらのリスクが生じてもなんとか事業が続けられるカギは「潤沢に現金預金をもつ」ことです。いうまでもなく、事業というのは資金さえあれば赤字だろうが開店休業だろうが続けられます。

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近年の大災害やコロナ禍の明暗を分けたのも、「使える資金がどれだけ確保できていたか?」でした。何をおいてもお金が重要になってきます。

サラリーマンを辞める前に、まずは、そのような余裕資金を蓄えられているか、考えておくことが重要だと思います。

前述した通り、フリーランスや個人事業主の方の現状は厳しいことがあるのは確かですが、それでもそこで身につく「自己実現」「仕事を通じて身につく知識や経験」「自分ひとりで生きていく術」は会社員をやっているだけでは得られないことです。

しっかりとどのように生きたいか? 働きたいか?を考えて、そのうえでフリーランスという働き方を選べるのであれば、より充実した未来が待っているのではないでしょうか。

廣岡 実 税理士法人TOTAL神田事務所所長・税理士

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ひろおか みのる / Minoru Hirooka

1959年生まれ。神奈川県出身。明治大学商学部を卒業。大学卒業後、大手商社に就職。会社員として経理・総務部門の実績を積む。税理士であった父親の病気をきっかけに退職し、父の税理士事務所で修行。1995年、税理士資格取得と同時に「税理士廣岡事務所」を設立。2024年1月より税理士法人TOTALのパートナーとして合流し、神田事務所所長となる。 「みんなが儲けてほしい」をモットーに顧客の立場に寄り添ったきめ細かいアドバイスが人気を集め、各種フリーランスや中小企業の顧客を増やし、「先生のおかげで起業できた」「事業が拡大した」という声も多い。

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