医師が推奨「がん患者の緩和ケア」なぜ大事なのか 緩和ケアには延命効果が、家族も対象に
この研究では進行がんと診断されたときから、緩和ケアの専門医やがんの専門看護師がチームを組んで関わりました。最初は患者さんに体の痛みなどはなく、チームは生活の質を向上させる相談や、治療法選択の意志決定支援などに関わっていました。
つまり、患者さん本人が元気なうちに、自分の病状を理解して、治療法を選べるようになったことがとても大きかったのです。
緩和ケアには副作用はありませんし、メリットの少ない終末期の抗がん剤を減らして生活の質を上げることもできました。
こうして科学的根拠が明らかになり、緩和ケアは標準治療の1つと考えられるようになりました。
がんと診断された直後から緩和ケアを始めるのが欧米の主流
日本ではまだまだ誤解されている面がありますが、緩和ケアは治療の手立てがなくなった患者さんに対して行われるものではありません。欧米では、がんと診断された直後から、標準治療と緩和ケアは同時進行で行われるべきという考え方が主流になっています。
なぜなら、患者さんやご家族にとって、がんと診断された直後が最も精神的な苦しみが強いからです。今後の治療や生活のことなど心の負担も大きくなります。そうしたことからも早くからケアする必要があると、昨今は考えられています。
WHO(世界保健機関)も、生活の質や人生の質を高めるのが緩和ケアの本質だと定義しています。
さて、緩和ケアでは、患者さんの苦痛を4つの要素でとらえています。心理的苦痛、身体的苦痛、スピリチュアルペイン、社会的苦痛です。
社会的な苦痛には、思うようにお金が稼げなくなることだけでなく、社会から取り残される痛み、好きだった仕事ができなくなった痛みも含みます。社会的な孤独や、それによって生じる夫婦関係のひずみにも、医療として対応しようということです。
スピリチュアルペインについては、日本では信仰や霊的なものと結びつけて考える傾向がありますが、もっと広い概念です。どちらかというと人生の意味や目的に関わることで、がんになった私は生きていていいのだろうかとか、死ぬのが怖いというようなものです。死に対する恐怖は人としてとても当たり前のことですね。
一方で、心理的な痛みというのはどちらかというと精神科の範疇になります。うつ状態になったり、適応障害になったりしたときは医師の診療の対象です。
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