「明治維新以降に産業化社会に入ってからの企業や業界の変遷、日本人経営者の哲学といった内容に学生たちは強い関心を持っています。最近注目されているのは、高齢化社会対応とか、日本の家族経営の事業継承ですね。30年近くの勃興期を経て、中国の民間企業も後継者を育てたりトップが交代したりするフェーズに入っています。これらのコンテンツはもっと充実させなければならないと思っています」
これまでも民営・新興の中国企業家の間には、日本企業をビジネスパートナーとして共に中国市場やアジア市場を開拓する試みがあった。だが、「最近は日本をマーケットとして捉える動きが出てきました。これは10年前には見られませんでした」と雷教授は語る。
2024年度には在籍する学生数が20人に達する見込みだ。雷教授は「近い将来30〜40人ぐらいに増やしてもいいと思っています」と強気だ。
それも無理はない。中国では、一時期隆盛を極めたMBAコースやEMBA(経営者向けの短期コース)への締め付けが強まっているからだ。
中国ではMBAやEMBAが箔付けに加えて、経営者による人脈づくりの道具としても使われている。2014年には習近平政権による反腐敗キャンペーンのもと、共産党幹部などに対してこれらのプログラムへの参加を実質禁止する通達が出た。共産党幹部と企業との癒着の温床とみなされたからだ。
ジャック・マー氏が立ち上げたビジネススクール「湖畔大学」も2021年に「湖畔創研センター」への改称を余儀なくされ、その後新規の学生募集がストップした。こうした状況を反映し、アジアを中心に海外で学位取得を目指す中国人企業家が急増している。
シンガポールでは中国語だけでMBAを取得できるプログラムが以前から存在していたし、お隣の韓国でも慶熙(キョンヒ)大学校が2015年に中国語MBAを始動させた。
そもそも、中国では経営者が通う定時制MBAコースの学費がうなぎ上りだ。トップ校である清華大では総額41万8000元(約869万円)、北京大では同42万8000元(約890万円)もかかる。一方で桜美林大学中国語MBAは今後学費改定の可能性はあるものの、現時点で総額約270万円と十分に割安感があるのだ。
日中の近さがアドバンテージ
さらにアドバンテージとなっているのが日中の地理的な近さだ。中国人学生の中には、中国語MBAに在籍しつつ、中国で経営を続けている人もいる。中国語MBAで学ぶ張黎平さん(48)は自身が深圳で創業した電子部品関連会社への関与は「毎月1回程度(オンライン)ミーティングを開く」程度で済ませているのだそうだ。これも、必要とあればすぐに中国の現場へ飛べる近さからできることだろう。
中国での「日本に学びたい」というニーズは日本語を学んだ人を超えて広がっている。日中両国の置かれたマクロ・ミクロ経済環境を考えると、「游学」や中国語MBAのような教育サービスへの中国側の需要は今後しばらく増えることはあっても減ることはなさそうだ。
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