エルピーダ坂本氏の遺言「日本はKOくらってない」 「日の丸半導体」を背負った野武士の規格外経営

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経営者としてエルピーダの破綻を避けられなかったのだから、坂本氏に厳しい意見があるのは当然だ。一方、その手腕を評価する声も間違いなくある。

前出の経産省元担当官は「正直、エルピーダが10年以上も生き残るとは思っていなかった。マイクロン傘下になった今でも広島工場が稼働を続けているのは、間違いなく坂本さんの手腕」と称賛する。坂本氏はリストラせずに工場を存続させるため、ギリギリのタイミングで破綻の道を選んでいた。

日の丸半導体の復活を期す、ラピダスの東哲郎会長(東京エレクトロン元社長)は、坂本氏を「世界的な視点で動く破格の経営者。政府や銀行への依存度が低く、強靭な精神で長期的な目線で戦略を組み立てていた」と振り返る。

坂本氏は李克強に会っていた

近年、中国との関係を深めていたことも坂本氏への毀誉褒貶につながっている。

2019年、坂本氏は中国の李克強前首相(2023年に死去)に会っている。同年11月には中国・清華大学系の半導体企業、紫光集団の高級副総裁に就任し、日本代表となった。当時の坂本氏は72歳だったが「69歳で剣道を始め、毎朝300本から400本くらい素振りをしている。体力があって頭もしっかりしている。何らかの成果を出して自分の人生を終えたい」と語っていた。

紫光集団での坂本氏のミッションは、DRAM事業の立ち上げ。量産工場立ち上げに向けて奔走していたが、2021年に紫光集団が破綻して立ち消えとなった。

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