「推し活」全盛時代に、つんく♂が思い描く未来 グループアイドルの形は進化していくはずだ

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当時は、握手会やサイン会をラジオや有線で曲がかかった時に注意を向けてもらうための宣伝として考えていたと思います。

その後アイドル文化が発展して、CDが聴くものから収集するものに変わっていき、ジャケットが違えば全種類ほしいといった欲求も出てきた。そうこうする間に、ジャケット写真の違うCDだけでなく特典の違うCD、握手券の入ってるCDなどいろいろなパターンが生まれ、純粋な音楽作りとは違う視線がアイドルの世界に向けられるようになった。

いつの間にかアイドルやアーティストのファンは、「家でCDを聴いて、コンサートに行く」というだけでなく、イベントやブログ、SNSでの発信まで含めた活動全体を楽しみにし、それらを拡散するという、2次的3次的な楽しみ方をするようになりました。

長らく「ファン」と呼ばれ、ときに「オタク」「ヲタク」と称されたりもしましたが、やっていたことは今でいう「推し活」に近いんです。

「推し活」の時代だからこそやりたいこと

――今の時代の特徴は、SNSでの発信を介して、自分と同じ「好き」の感情を持つ他者と容易に出会えることでしょうか。「推し活をしている、誰かのファンである、何かのオタクである」という前提で行われるコミュニケーションの広がりはSNSの存在が大きいように思います。ただ、昔の「オタク」と今の「推し活」とでは、活動内容が似たものである一方、周囲から向けられる視線は変わってきています。

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「オタク」なのか「マニア」なのか。どう呼ばれるのが先だったかはわからないけれど、例えば僕なんかは「オーディオマニア」とか「オーディオオタク」と言われると、それは自分にとっては褒め言葉だったわけです。他人からしたら、「あんたキモいよ」という意味の言葉だったとしても、本人はうれしかったものです。

アイドルオタクという言葉にも、いろいろな意味が与えられてきたように思います。人と比べた時によりアイドルに夢中になっていて、とにかく誰よりもアイドルに詳しいとなれば、そこには「リスペクト」が生まれます。

何であれ同じです。あいつは「虫」に詳しすぎる! 「蕎麦」のことはあいつに聞け!というところまでいくと「オタク」はある種の「先生」です。

人生そこまで行けば、何とか食べていけそうな気もしますが、今は1億総「推し活」時代。何かを推していなければ、「え? 無趣味ですか?」とみられる場面さえあります。かくいう僕が、今が一番「推し無し」かもしれない……。さまよっているんです。

「推し」があ(い)れば人生は楽しいし、日本の経済にもいい。僕は「玄人裸足」という言葉が好きなのですが、玄人(プロ)が逃げ出すほどの「推し人(アマチュア)」として生きていくのが、人生一番楽しいのかもしれない、と思うこともあります。

そんな時代だからこそ、そしてこの時代にプロとして応えていく意味で、僕は多くの人に「推し」てもらえるようなアーティストを育てていきたい。最後に言いたいのはこの言葉です。

これからもがんばります!

山本 舞衣 『週刊東洋経済』編集者

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やまもと まい / Mai Yamamoto

早稲田大学商学部卒、2008年東洋経済新報社に入社し、データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーションを経て、2020年4月育休を終え『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や書評の編集などを担当。

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