日鉄「USスチール買収」トランプの壁を超える方法 USWとは秘密保持契約を結べたが…

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USWの不満の根底には2つの問題があるようだ。アメリカ市場で収益を上げれば、日本製鉄はこれらの問題を解決するために必要な費用を支払うことができる。

1つはUSスチール経営陣と同様に、日本製鉄も組合員の高炉を閉鎖するか売却しようとするのではないかという組合側の懸念である。その代わりに、非組合州にある電気アーク炉に完全に依存することになる。

実際、最初の取り組みでは、日本製鉄は電気アーク炉だけを入札した。が、USスチールが「オール・オア・ナッシング」であるとして高炉も購入した。しかし現在、日本製鉄は、「合併によってUSスチールの高炉を閉鎖するつもりはない。我々は、USスチールの既存の高炉に新たな投資と技術革新をもたらし、我々の脱炭素化の努力と全体的な効率化を促進することを楽しみにしている」としている。

バイデンが再選すれば、高炉の脱炭素化作業の資金調達にインフレ削減法を充てることで、取引を有利にする可能性さえある。

組合が納得できる「保証」を提示できるか

2つ目は、組合と現在のUSスチール経営陣との関係は非常に険悪であり、日本製鉄は組合傘下の工場の円滑な操業を保証するためだけに組合と和解する必要があることだ。USWはUSスチールの経営陣に完全に不信感を抱いており、日本製鉄が現経営陣を使って施設を運営することを恐れていた。

日本製鉄は新しい経営陣を起用し、USスチールとはまったく異なる態度をとることで組合を納得させる必要がある。日本製鉄は高炉、人員削減の禁止、組合との契約条件の維持など、茨の道である問題について多くの正しい言葉を述べてきている。

一方、組合側は日本製鉄が 「我々を信頼せよ」という態度をとっていると不満を表明している。保証を求めているのだ。問題は、日本製鉄が組合側を満足させるだけの保証を、トランプによる妨害を回避する時間内に提供する用意があるかどうかだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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