「出世渇望する男性描く」清少納言の共感呼ぶ文才 「春はあけぼの」だけではない日常描いた文章

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「ちょっとくらい、そういうところに、行ってもいいじゃないか」と清少納言は言うのでした。なんと理解がある平安女性でしょうか。 

修験者ともなると、更に苦しそうに見えると清少納言は書いています。疲れて居眠りしていても「居眠りばかりしおって」と文句を言われるからだと言います。

清少納言の文才が垣間見える

「身の置き所がなく、どんなにつらいだろう」と同情しています。しかし、最後の一文には、どんでん返しの一言も書かれています。

「ただし、こんなことはもう昔のことのようだ。今は、ひどく気楽そうだ」と。この落差といいますか、どんでん返しの展開もある、清少納言の文才。なかなかのものと感じるのは、私だけでしょうか。

(参考文献)
・石田穣二・訳注『新版 枕草子』上巻(KADOKAWA、1979)
・渡辺実・校注『枕草子』(岩波書店、1991)

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

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はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数

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