寿命を延ばそうと糖質制限する人の"落とし穴" 長寿遺伝子サーチュインは活性化するが…

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さらに、炭水化物制限は特にインスリン抵抗性の糖尿病の人にとっても有益です。炭水化物の摂取を最小限に抑えると血糖値が安定する傾向があり、インスリンやその他の血糖降下薬の必要性が減少します。

当然、糖質制限は摂取カロリーの減少にもつながりますので、サーチュインの活性化を誘導します。その結果、寿命が延びる可能性があります。

このように、糖質制限は一見素晴らしい食事法に思えます。しかし、カロリー制限と同様糖質制限も私はあまりおすすめしません。

糖質制限には多くの欠点もあることが知られています。例えば、糖質制限をすると食物繊維、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質の重要な供給源である果物、全粒穀物、豆類などの特定の栄養価の高い食品の摂取量が減少してしまう結果につながります。糖質の多い食品である果物や穀類を食べないことは、糖質以外の必要な栄養成分を摂取しないことにつながってしまうのです。このように、食事方法として適切に管理されずに糖質制限食を実施すると、これらの必須栄養素の欠乏のリスクを高める可能性があります。

全粒穀物、果物、豆類などの多くの高炭水化物食品は、食物繊維の優れた供給源です。食物繊維は、健康な消化を維持し、血糖値を調節し、健康な腸内微生物叢を促進するために不可欠です。糖質制限による食物繊維の摂取不足は、便秘、消化器系の問題、腸内細菌叢のバランスの崩れを引き起こしてしまう可能性があります。

炭水化物を制限するとどうなる?

本来、糖質などの炭水化物は我々人体にとって好ましいエネルギー源です。特にアスリートなどの激しい身体活動を行う人の場合、炭水化物の摂取が大幅に制限されると、エネルギーレベルの低下、疲労、運動能力の低下につながってしまいます。

炭水化物の不足は、体を維持するための燃料として脂質を使用することで順応できます。しかし脂質分解の程度が強すぎた場合は、脂質をエネルギーに変換するのに手間取り、運動活動中は効率的ではないことになってしまい、問題が発生する場合があります。

糖質制限は、穀物、豆類、芋類などのでんぷん質を多く含む野菜の摂取を避けるか、極端に制限することと同一視されている場合が多いようです。これらの食品の摂取制限により、肉食が極端に増加してしまい、結果的に好き嫌いの助長、伝統的な日本的食習慣から逸脱し、食生活の社会的状況を満たすことが困難になってしまいます。

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