老舗書店が創った「絵本グッズ」という新たな市場 エフェクチュエーション理論で読み解く(前編)
とはいえ、儲からないビジネスに未来はありません。良い本を棚に並べ、文化の担い手としての役割を果たすためには、何よりもまず利益率を上げていく必要があります。
カフェの併設やイベント開催で来店数を増やしたり、熱のこもった手書きのポップで客単価向上を狙う。あるいは返品コストを削減するためにAIで需要予測の高度化を図るなど、多くの書店が持続可能なビジネスのあり方を探しています。
こうした努力に冷や水を浴びせたのがコロナ禍です。丸善丸の内本店の篠田晃典店長は緊急事態宣言下、普段は人であふれる東京駅前の広場を闊歩するハトの姿を見て、危機感を募らせたといいます。
「店の売り上げは半減。いつ状況が改善するとも先が見えない中、このまま待っていたらつぶれると本気で思いました」
コロナ禍で生まれた新規事業の芽
私が研究する「エフェクチュエーション」は不確実性の高い状況における意思決定の理論で、新しい市場や産業を創造するきわめて不確実性の高い問題に繰り返し対処して成功した起業家の思考様式から導き出されたものです。
エフェクチュエーションは、次の5つの行動原則から構成されます。
目的ではなく、すでにある手持ちの手段(資源)から何ができるかを発想して着手する。
アイデアを実行するにあたってダウンサイドのリスクを考慮して、起きうる損失が許容できるかどうかという基準でコミットする。
コミットメントを提供してくれるあらゆる関係者とパートナーシップを構築する。
予期しない事態や手段も受け入れ、ポジティブに捉えて活用する。
予測不能な状況下でも、自らコントロール可能な要素に行動を集中する。