「キャリアアップ」のバカヤロー 常見陽平著


 第2章「転職のバカヤロー」では、転職は本当にキャリアアップになるか。転職=キャリアアップの認識をみつめなおす。20代後半に、「転職しなくちゃ」という気持ちになる人は多い。評者も洩れなくそうだったので、とてもよくわかる。著者は「本当に転職する必要はあるのか」と問いかける。「転職したいという思いは大事にしたいが、転職を目的化していないだろか」と痛いところを突いてくる。

転職して気になるといえば年収である。転職で期待することのひとつだ。実際はというと、転職を繰り返すほど、年収は下がるという法則があるという。リクルートエージェントのデータをもとに海老原嗣生氏が作成した転職回数と年収の相関関係の表が掲載されている。20代~40代までの全ての年代の男性で、転職回数が多いほど、それに伴い平均年収も下がっている。

著者は内田樹氏の「街場のメディア論」から「人から頼まれる仕事こそが天職」という考え方を引用し、賛同している。自分のやりたいことが人から仕事を依頼されるほど向いている仕事と一致しているとは限らない。
 
 著者の厳しい視点に納得させられるのが第4章「自分磨きのバカヤロー」。自分磨きといえば資格をとること、セミナー、自己啓発、異業種交流会とたくさんある。しかし意味のない自己啓発や仕事術など痛々しいだけ。自分磨きをするにしても「仕事といかにつなげるか」「どうやったら仕事に活かせるのか」という視点がなければ何の磨きにならないと鋭利な刃物の如く斬りこむ。

自分を磨くことに必死で、実際の仕事ができないようでは情けない。自分磨きに必死で仕事ができない人ほど痛々しいことはない。アウトプットをしてこそ、自分磨きも活きてくる。勝間和代氏の本を読み、自分磨きに励む「カツマー」のことを例に引き、自己啓発書やビジネス書を読むだけでは残念ながら変われないと、説く。

「仕事にしろ、自己啓発にしろ、やった気になった人が多すぎる。価値を届け、お金をもらうところまでやり切らなくては仕事ではないし、もし自分を成長させ仕事につなげたい自己啓発なら、仕事に活かす工夫をしなければ意味がないのである」との言葉には納得する。

リクルート、トヨタとの合弁会社、そして玩具メーカーの新卒採用担当を経て、現在人材コンサルタントである著者のキャリアアップに対する鋭い見解が響く内容でまとめられている。キャリアアップのイメージを根底から変える貴重な1冊。

(フリーライター=荒幡 幸恵)

講談社+α新書 838円

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