4月に日銀が利上げをすると一体どうなるのか いよいよ金融政策の転換のときが迫ってきた

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なお、日銀の現行の金融政策の枠組みは、いわば複数のツールの組み合わせとなっているため、これらの政策が一斉に変わる可能性が高い。最近の日本銀行からの情報発信に基づけば、以下のような政策変更が予想される。

・マイナス金利政策の修正。具体的には、2016年以前のように無担保コール金利をゼロ~0.1%への誘導と変更する。内田真一副総裁は、「仮に」と断りながら、この政策対応について2月8日に言及している。
・YCC(イールド・カーブ・コントロール)の本丸である長期金利ターゲットの解除。黒田(東彦)前体制時から長期金利目標は柔軟化されたので、2022年末以降は10年国債金利は0.6%程度で推移しており、インフレ期待の高まりで10年国債金利ゼロは、有名無実化している。ただし、長期金利上昇を抑制する枠組みやメドを示すなど、「YCCの機能」の一部を残すとみられる。
・2016年時に導入された「オーバーシュート型コミットメント」の撤廃。政策発動の条件となっている「物価実績が2%を安定的に超えるまで」との判断に至る可能性が高い。
・過去数年、政策手段としてほとんど使われなくなったETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)購入の枠組み終了。

   
もし、この通りになれば、長期金利上昇を防ぐ措置以外の「非伝統的」と位置づけられる多くの金融政策はなくなる。同時に、政策金利を引き上げる対応は、2007年の利上げ以来、実に17年ぶりとなる。

「日銀の利上げ」は大きなリスクなのか?

では、4月に実施される可能性が高い日銀の利上げをどう考えればいいのか。2000年代は日本銀行が利上げを始めた後に、程なく経済が再び停滞してデフレに陥ってきた。「今回も同様の失敗を繰り返すのではないか」との疑念を抱く向きも多く、筆者も無視できないリスクシナリオと認識している。

ただ、現在と2000年代(2000年、2006年)を比べれば、日本経済やインフレに関する状況は、かなり変わっていることも事実である。

まず、 先述の通り、春闘賃上げ率が約4%での推移が2年続くとすれば、これは1993年以来だ。雇用を確保するために賃上げを積極化する企業は、2000年代はほぼみられなかったが、今は「ゼロインフレ」を前提とした企業行動が変わり、多くの企業が人手を確保するために賃上げが必要との認識が広がっている、とみられる。

さらに、2000年代は「2%インフレ目標」が設定されていなかったことも大きな問題だった。2000年代はインフレ率がゼロをやや超えた時点で日銀は利上げを行った。当時、日銀は「ゼロ%インフレ誘導策」を行っていたと筆者はみなしているのだが、こうした政策姿勢で決断された、利上げは結果的に「勇み足」であり、それが故に日本経済がデフレに戻る一因になった。

一方、現在、2%物価目標は、政府と日銀の間で明確にコミット(目標実現を約束)されている。

もし2000年代のように利上げ後に、2%インフレの軌道から下振れれば、日銀は政治的な説明責任を課され、金融緩和を再び強化することになる。2013年の「金融緩和のレジーム転換」でデフレが和らぎ雇用が生まれて社会が安定したことで長期政権となった安倍政権を支えた事実を、多くの政治家が認識していることも大きい。こうした中で任命された植田総裁にとって、「デフレ完全脱却」を実現するインセンティブになっているようにみえる。

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