韓国社会の"病根"がMERS禍の拡大を招いた 「一次感染の終息」宣言後も感染者数が増加

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今月8日には、最初の感染者が入院していた病院から新規の感染者が出ていないことを理由に、「一次感染の終息」を宣言した。が、その後も別の病院で新たな感染者が出ており、死者も増えている。何のための終息宣言だったのか。これだけでも政府の迷走ぶりがわかる。

感染者自身の行動も軽率だった感が否めない。感染を疑われながら韓国を出国した男性や、隔離対象者であるにもかかわらずゴルフざんまいだった女性など、例を挙げればキリがない。また、感染者と接触した医師が、1000人超の参加する集会に出入りしていたことも判明している。一般民間人だけならまだしも、医療関係者までこの程度の認識なのだ。

観光への影響も顕在化

朴槿恵(パク・クネ)大統領への不満も最高潮に達している。6月8日に実施された世論調査では、支持率が前回(5月下旬実施)から8ポイント下落し、37.7%まで低下。「国政運営が間違っている」という回答は7ポイント上昇の55.6%となった。

メディアから対応の不備を突かれた際、朴大統領は「マニュアルどおりに対処したが、結果的には初動対応に弱点があった」と発言し、国民から反発を食らった。その後も「打ち勝つという意志があれば、ひどい病魔も克服できる」と発言。「病は気から」、という非科学的な発言で責任逃れをしていると、国民はあきれ返っている。

渡航の自粛を促す国も増えており、香港や台湾では計4万人超が韓国行きをキャンセルしたという。日本でも旅行を取りやめる人が出てくるなど、順調だった観光業にも影を落とし始めている。

患者の早期の回復を願うばかりだが、隣国発の流行が日本に波及しないか、心配と不満は募る一方だ。

「週刊東洋経済」2015年6月20日号<15日発売>「核心リポート06」に一部加筆)

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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