「1200袋の大量ゴミ」母の遺品整理する息子の心境 生前整理は大事だが、あえてしないという選択

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業者に頼まず一人で1200袋を外に運び出すとなった場合、体力的な問題のほかにもゴミ捨て場がキャパオーバーになってしまう問題もある。一人の住人が1日に100袋もゴミを出してしまったら、ほかの住人や管理人と何かしらのトラブルが起きることは容易に想像できる。

「昔は遺品整理の業者も少なかったんですが、今は選べるくらいには充実しています。その中から3~4社に見積もりをしてもらうのがいいんじゃないかと思います。料金は平均的だけど手厚い対応をしてくれるとか、とにかく予算を削れるとか、遺品整理にもそれぞれのスタイルがあるので、とりあえず呼んでみたらいいんです。だって、どこの業者もだいたい見積もりは無料でやってくれますから」(文直氏)

お金と時間の価値観は人によって違う

亡くなってからバタバタするのではなく、生きているうちに生前整理をしておいたほうがいい理由もわかる。それができなかったゆえに、男性は1年間の家賃を払い続けた揚げ句、最終的には業者にお金を払って片付けをすることになった。「お金と時間の無駄」という声もあるかもしれないが、男性に後悔はなかった。

「母の死亡届を出したとき、お役所仕事なので仕方のないことなんですが、紙に“×”をつけて終わりだったんですね。そのときに無情を感じたというか、人が亡くなるってこういうものなんだって。もし、母が亡くなった翌月に業者を呼んでいたとしたら、心にポカンと穴が空いたような気持ちになっていたかもしれません」

片付け後のダイニングキッチン(写真:「イーブイ片付けチャンネル」より)
(写真:「イーブイ片付けチャンネル」より)
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作業は9人のスタッフで行われ、ものの4~5時間で母が住んだ家は空っぽになった。しかし、男性の表情は晴れやかだった。それは、「生前整理をしない」という選択と、1年という「片付けない」期間があったからこそである。

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國友 公司 ルポライター

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くにとも こうじ / Kozi Kunitomo

1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーに。そのほかの著書に『ルポ路上生活』(KADOKAWA)、『ルポ歌舞伎町』(彩図社)がある。

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