インフレでも「上がらない家賃」の裏に日本の宿命 「家賃は手取り収入の3割が目安」と言うけれど

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家主にしてみれば、値上げして空室より、毎月家賃が入る方がいい(写真:EKAKI / PIXTA)

植田和男日銀総裁は1月の金融政策決定会合後の会見で、サービス価格の動向について次のように述べた。

「おっしゃるように、上昇している部分の一部に明らかに一時的と思われる要素がそこそこ含まれていますし、多少消費の弱さのマイナスの影響もみられるということだと思います。私どもはそういう部分を除いたらどれくらいの強さであるかということを、あらゆる手法で抽出しようとしています。そうした分析は厳密にはなかなか行いにくいものですけれども、結果としては少しずつ上昇しているということは言えそうな結果が出ております」

これから物価目標達成を宣言し、マイナス金利を解除していくにしては弱気な発言だと、筆者は感じた。

「サービスインフレ」を支えるのは外食と宿泊料

2023年12月のCPI(消費者物価指数)によると、総合の前年同月比は2.6%で、そのうち財が2.8%、サービスが2.3%である。サービスを押し上げているのは、外食(一般サービス分、サービスの前年同月比への寄与度は0.38%ポイント)や宿泊料(0.96%ポイント)で6割弱を占める。

言うまでもなく、外食は原材料やエネルギー価格の高騰の影響を受けており、宿泊料は前年の全国旅行支援で指数が低下していたことの反動や、インバウンド消費のペントアップ需要による影響が大きいだろう。

サービスはCPI全体を10,000としたときに4954のウェイトを占めるが、そのうち公共サービスが1219で、民営家賃(225)と持ち家の帰属家賃(1580)が合計で1805で、その他の一般サービスが1930というバランスである。

一般サービスに含まれる外食(一般サービス分)が434で、宿泊料が81にとどまることを考えると、これらの品目に安定的な物価目標達成を担わせるのにはあまりにも荷が重い。大きなウエイトを占める公共サービスは前年同月比マイナス0.3%、民営家賃と持ち家の帰属家賃がいずれも同0.1%にとどまっている状況に変化が必要であることは明らかである。

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