組織からの逃げ場ない40代ガンダム世代 『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』著者が語る
--ワンピースの価値観は「自由」と「仲間」ですね。
その若者たちは、仲間を少人数持っていて、その仲間で自分たちの日々の暮らしや人生における第一軸を作る。「上の世代」にとっては所属する組織が第一軸なのに、彼らはそうではない。会社や組織は第二軸になっている。生活とワンピースの構成との類似性の発見が、世代特徴と絡めて考える端緒になった。
--ご自身は、その「上の世代」です。
私は今48歳。同世代の人々は、いろいろな組織で管理職としてかなり苦労をしている。今の日本は仕組みや制度が疲弊してきて、今までのように愚直にやっていればいい時代ではない。その中で、管理職は組織を維持するために自らの意に沿わないことにも忠誠を尽くす。その管理職の行動や価値観、さらに悩みを探ると、世代共通の行動規範の背景として『機動戦士ガンダム』(以下、ガンダム)が浮かび上がってきた。
--30年前近くに一世を風靡したアニメです。
その時期は、今組織で苦労している管理職の人格形成期に重なる。
ガンダムは、宇宙世紀と呼ばれる未来の世界を舞台にして、それまで子供向けだったロボットアニメを一気に大人向けにした作品。放送当初は人気が出なかったが、熱烈なファン層ができ、放送が終わった1年半後に今度は映画になる。映画になったころからブームに火がついた。
大人向けだけに、現実世界に近い権力闘争や組織同士の抗争も繰り広げられる。それが、われわれの世代に刺さった。地球連邦軍に属する主人公アムロ・レイといったヒーローが出てくるとともに、敵対するジオン公国軍の中に、シャアというこれも人気の高いキャラクターが出てきて、おのおの自分の信念に従って、1年戦争と呼ばれる未来の宇宙での戦争を互いに戦い抜く。