政府は「仕事の復旧」と被災者福祉の拡充に全力を
菅直人政権の被災地政策の実行があまりにも遅すぎる。地震から100日が過ぎた今も、がれきの山の多くはそのままだ。仮設住宅の建設もいまだ途上にある。震災前から国政の責任者である菅首相の周辺では、日々、かしましい議論が重ねられているが、彼らに被災地の厳しい実情が見えているとは、到底思えない。
広がる生活保護打ち切り
被災した現地では、理解に苦しむ事態が生じている。たとえば、第1次義援金や、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う仮払い補償金の給付を理由に実施されていた、生活保護の打ち切りがそうだ。東電による補償金支払いがあるため、原発に近い福島県の自治体に例が多いが、宮城県でも同様のケースが見られる。
この問題に先立って、厚生労働省は5月2日付で「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」と題する文書を都道府県などに通知、被災した被保護世帯が震災関連の義援金などを受けた場合の収入認定の取り扱いを指示している。厚生労働省は、「きめ細かい対応による取り扱いの柔軟化策」と説明している。
義援金などを給付された生活保護世帯に対し、自立更生に充てられた費用を控除した残りの金額を収入と定める、というのがその骨子だ。被災して破損した生活用品や家電などを新たに購入する場合、費用を自立更生のために充てられるものと明記すれば、自立更生計画に計上することができ、その分は収入として認定されない。収入認定額が低く、生活保護基準を超えなければ、生活保護が維持されることになる。
通知では、「被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取扱いとならないよう留意するとともに、被災者の事務負担の軽減に務めること」としている。
これだけ読めば、確かに“柔軟化”策のようにも見える。だが、現実には、とてもそうとは思えないような話が聞こえてくる。