政府は「仕事の復旧」と被災者福祉の拡充に全力を

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 6月22日現在、福島県南相馬市では168の世帯が生活保護を打ち切られている。また、原発事故で市外に避難している世帯にも、打ち切られたケースが少なくない。

6月24日、細川律夫厚労相に対し、「被災地での義援金等の収入認定による生活保護の廃止をしないことを求める要望書」を提出した「全国生活と健康を守る会連合会」の弦弓高明(つるゆみたかはる)・福島県同連合会事務局長はこう説明する。

「南相馬市では、原発の水素爆発後、ケースワーカーも避難し、市内に残ったのはわずか4人。その態勢で、320世帯の生活保護世帯を見るという状況になっている」

つまり、程度の差こそあれ、ケースワーカーや福祉行政を担う自治体職員、あるいは保険福祉事務所職員なども同じ被災者である。きめ細かい対応を行うには、状況は過酷だ。国が自画自賛する“柔軟化”策はこうした実情を織り込んでいるのか。

そもそも、震災の発生以来、政府が体系立った実態調査を継続的に実施しているようには見えない。被災地を訪れるたび、この思いは募るばかりだ。生活保護をめぐる被災地の混乱ぶりは、政策の構想における状況認識不足の証左と言いたい。

生活保護が打ち切られると、医療費を免除されていた被保護世帯は、国民健康保険の被保険者に復帰することになる。保護を受けていたときは免除された医療費負担が一挙にのしかかってくる。南相馬市に住む元原発職員の男性は、心臓疾患など複数の疾病を抱え、妻も病床にある。負担は重い。生活保護打ち切りの心労で妻の病状はさらに悪化した。

「義援金も補償金も返す。お願いだから、生活保護を元に戻してほしい」という懇願の声は切実だ。

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