綿菓子製造機の移動販売がゲーム全盛期への道築いた--カプコン会長兼CEO 辻本憲三[上]

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綿菓子製造機の移動販売がゲーム全盛期への道築いた--カプコン会長兼CEO 辻本憲三[上]

夜中の12時、辻本家の書斎に明かりが灯る。やはり今日も、気になって寝ていられない。週次の販売実績、本社と個別店舗の在庫。その前年比と計画比……。手元の書類には、びっしりと数字が並ぶ。明け方まで数字と格闘した辻本憲三は翌朝、何事もなかった顔をして、大阪市中央区の本社に出勤する。

「あらゆる数字を完璧に把握していたい」という欲望に、辻本は常時取りつかれている。「もちろん欲望であって、帰ったら疲れて(仕事)できないときもあるけど」。

家族との食事が「唯一のプライベート」である辻本にとって、深夜は最も集中できる仕事の時間。だから毎日、数センチの厚さの書類を持ち帰り、鵜の目鷹の目で“異変”探しに没頭する。

辻本が創業したゲームソフト開発大手のカプコンは、1983年の創業から、今年で28年目。売上高1000億円に手が届くところまで来た。だが、「(売上高を)今の倍にしたいとかは、全然思わない」。それよりも、とにかくキャッシュを蓄えたい。業績が低迷した7年前から450億円改善し、前期末のネットキャッシュは270億円。これをまずは1000億円にしたい。そうなるまでは夜も眠れない。

昨年末来、たとえば駅のホームで携帯ゲーム機「PSP」に熱中する少年たちを見掛けたなら、それはカプコンの『モンスターハンター』(通称モンハン)のプレー真っ最中だったに違いない。12月1日に発売されたモンハン最新作は、複数人プレーの楽しさが受け、発売後1カ月間で累計出荷本数400万本を突破。100万本で大ヒットといわれるゲームソフトの世界で460万本まで伸ばした。PSP向け国内タイトルとしては断トツの本数で、国内上位累計10タイトル中、モンハンシリーズが5タイトルを占める完勝である(エンターブレイン調べ)。

昨秋1100円まで落ちた株価は、今期の減収減益計画を発表しても、むしろ上昇基調にある(6月29日末1815円)。モンハンが、カプコンの開発力に対する株式市場での信用を押し上げた結果だ。

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