「NTDsの撲滅には、日本の力が必要です」 熱帯感染症の権威、ホッテズ教授に聞く
NTDsに早くから着目し、その制圧のために尽力している、ベイラ―医科大学教授で国立熱帯医学校創設学長でもある、ピーターJ.ホッテズ教授に話を聞いた。
――なぜNTDsに着目されたのでしょうか。ご著書には「中学生の時から熱帯地域の公衆衛生上の問題を科学の力で解決することに関心があった」と書かれています。
子どものころからサイエンティストになりたいという夢がありましたが、同時に、世界に人道的にどのように貢献できるか、ということにも関心がありました。
NTDsの問題は、ただ単に健康の問題であるだけではありません。経済の問題が隠されています。貧困のせいで公衆衛生の状態が悪く、次々に感染してしまう。適切な治療を受ければ治る病気ですが、貧困のせいで、感染しても治療を受けられず病状が悪化する。そのせいで働くことができず、ますます貧困から抜け出せない、という状況に陥っていきます。これをなんとかしたいという思いがありました。
「速効パッケージ」と「反貧困ワクチン」
――ご自身の研究について教えて下さい。
私自身の研究には、二つのアプローチがあります。
一つは「速効パッケージ」と呼んでいますが、開発した薬4種類をパッケージ化し、10億人の患者に届けること。それによってNTDsの感染をコントロール、さらに進んで制圧するように取り組んでいます。日本のエーザイが開発した医薬品も入っています。
なぜパッケージか、ということですが、複数の感染症が同時に流行している地域も多く、1種類の薬だけでは十分ではありません。そのため、複数のNTDsに効く医薬品をパッケージ化して届ける、ということをしています(実際の配布は米国国際開発庁が行っている)。