通勤快速廃止で炎上、京葉線ダイヤ「3つの疑問」 快速の各駅停車化で「混雑の偏り」は解消する?

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通勤快速の代わりにほぼ同時間帯に新設される特急。それならば、八丁堀駅利用者や臨海副都心方面への通勤需要を狙って新木場にも停めればいいのではないかと思えるが、この列車は蘇我―東京間無停車だ。JR千葉支社は「特急列車の停車駅については、お客さまのご利用が見込まれる駅やご利用が見込まれる時間帯等を踏まえて検討を行っております」と説明する。これでは現在、新木場まで通勤快速を使っている通勤客は無視のように受け取れる。

JRが京葉線のサービス向上に意欲的になれないであろう構造的要因はある。まず京葉線には競合路線があるようでない。総武線は自社線であり、京成は競争力としては論外だ。だが並行路線ばかりが競合ではない。沿線価値向上を考えてダイヤ改善に余念がない私鉄は多い。家を買った後に利便性が低下するかもしれないとなれば、JR沿線は居住地の選択肢から外されていくだろう。

世間のダイヤへの「無関心」も要因では

また、背景には旅客減少もあるようだ。京葉線はコロナ禍後の利用回復が遅く、コロナ禍以前の7~8割程度とされる。ただ、千葉県統計局のデータによると同線の利用者数は2013年から2018年にかけて1日当たり約1万8000人増加しており、沿線人口の減少などはない。コロナ禍以外に減少する要因は見当たらないが、他線より回復が遅いのだ。

その要因の1つとして、2022年のダイヤ改正で快速・通勤快速を減便したこともあるのではないか。佐藤信之氏は「こんなダイヤでは客が減って当たり前だろう。客が減っているなら、普通の企業ならサービス向上して客を増やそうとするが、なぜ世間と逆行しているのか」と疑問を呈す。

これについてJR千葉支社は「現在もコロナ禍前の約7~8割程度のご利用状況です。コロナ禍が終息しても、テレワークをはじめとした働き方の変化や少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少などにより、コロナ禍前のご利用状況までは回復しないと考えております。上記要因について、各沿線において状況が異なることから、線区ごとにご利用の回復状況に差が出ているものと考えております」と説明する。

京葉線の利用回復の遅さは仕方がないと考えているとも受け取れる。これではテレワークから通勤需要が戻らないどころか、さらなる通勤離れを生みそうだ。JRにはこれ以上お客が減ってはいけないという危機感が見られない。

いかがだったであろうか。あるテレビ番組でJR東日本の社長は「鉄道会社がこんなことやるの?と思われるくらいの鉄道会社を目指していきたい」と意気込んでいたが、ある意味ではその期待を裏切らなかったのが今回の騒動といえる。

一方で、これまでも少しずつ朝の快速廃止や通勤快速の減便などが行われてきた中、声を上げた沿線自治体や住民はあっただろうか? 生活に直結する列車ダイヤへの世論の無関心が、今回の「暴挙」を許したという面も大いにあるはずだ。これからも筆者は先陣を切って列車ダイヤの議論が盛り上がるように活動してまいりたい。

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北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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