イーロン・マスクが宇宙にこだわる本当の理由 タイパ・コスパの「対価」と国家という「重力」

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青木:カウンターというか、他者がいて自分がいるっていう感じかな。ソ連が崩壊したりしたことで、資本主義、自由主義の勝利だと言われたわけだけど、じゃあ何が不自由になってきたかっていうと国家自体の存在だと思うんですよね。国家というものを超えて人間が自由を行使できたら、より利益が追求できるという時代に入ってきた。それで多国籍企業やグローバル企業と言い始めて。じゃあ、グローバル企業の人たちは次に何を不自由に思うかっていうと、重力なんですよね。地球を不自由に思うから、イーロン・マスクとかも宇宙に行くわけで(笑)。

坂本:確かに(笑)。なんかガンダムみたいな話になってきた。

タイパ・コスパと「対価」

青木:慎吾がいうように不自由や他者っていう、自分が思うようにできないものがあるからこそ「何を思い通りにしたいのか」を考えるというのはありますよね。人間が他者や不自由を必要とするって、そういう意味なんじゃないかな。

僕や坂本さんは東吉野村っていう不便なところに越してきているわけだけど、不自由や不便があるからこそ、何が必要なのかが生まれてくる経験をして、ものづくりができるというのもある。それをローカリズムって呼ぶんじゃないかなって気がしています。

青木氏の写真
青木真兵(あおき しんぺい)/1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークとしている。2016年より奈良県東吉野村に移住し自宅を私設図書館として開きつつ、現在はユース世代への支援事業に従事しながら執筆活動などを行っている。著書に『手づくりのアジール──「土着の知」が生まれるところ』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館──ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー)などがある(撮影:宗石佳子)

坂本:面白いね、それ。いやなんかさ、グローバル企業ってすごくいい感じの友達みたいに見えて、付き合い始めはいいけど実は敵みたいな状態やん。いいようにやられている感じというか。GAFA全般しかり、一見自由を与えられているように見えてるんだけど、実はものすごく管理された自由で、ある一定の枠から外には出られないように完全にコントロールされている。それによって、「うっすら対価くださいね」って言われてる状態で。そのうっすらが世界中から集まってくるとすごい量になっていると。

青木:対価っていうのは、お金だけでなく個人情報だったりというのもありますよね。

坂本:そうやな。捧げてる時間そのものもある。ぶっちゃけ、お金よりよっぽど大事なものを捧げるとも言える。マトリックスの世界みたいに、俺たちは仮想の世界を見せ続けられててプラグを抜くと現実の世界でベッドに横たわっている奴隷みたいな存在というね。一見自由を与えられたように見えるけど、プラグを抜いたらカオスな状態で全然自由じゃない。でも実際の世界っていうのは、プラグを抜いた外側にあるんだよね。不便だし、大変なことも多いし、課題も山積みだけど、そっちの方がリアルっていう構造が見えてきたような気がしてて。

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