なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない

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第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。

正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。

インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。

入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる。

日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも

少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。

それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。

その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。

さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。

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