「スマホ依存」の人がハマる宿命的な脳のトラップ ドーパミンの分泌と不安に追われるラットレース

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じつのところ、このふたつの機器は共通点があまりに多いことから、倫理的デザイナーのトリスタン・ハリスは、よくスマホをポケットに入れたスロットマシーンにたとえる。

「テクノロジーはいかにして脳をハイジャックするか」と題された記事で、ハリスはこう説明する。

「スマホをポケットから取り出すとき、どんな通知が出るかとスロットを回している……インスタグラムのタイムラインを下へ下へとスクロールしながら、次にどんな画像が出てくるかとスロットを回している。

マッチングアプリでプロフィール写真を右へ左へとスワイプしているときも、次こそマッチする相手かと期待しながらスロットを回している」

ハリスのこの指摘には、とりわけ不安をかきたてられる。もうお気づきだろうが、スロットマシーンは、使いたい衝動を抑えられないほど報酬システムを刺激するようあえてつくられた、史上屈指の依存性を持つ機器である。

つねに不安をかきたてるスマホの魔力

進化において不安は重要な要素だ。行動を起こす動機になるからだ(餌の心配をするライオンのほうが、吞気にかまえているライオンより飢える可能性は低そうだ)。

とはいえ、不安は起こりやすく、解消できない場合にはストレス性の症状に発展しかねない。

カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校の心理学教授ラリー・ローゼンによると、スマホは意図的に不安をあおっているという。

手に取るたびに新たな情報を提供し、同時になんらかの感情をかきたてる。それにより、ほんの一瞬でもスマホを置くと、何かを見逃すのではと不安になるのだ。

この不安感は、一般にFOMO(何かを見逃す不安:Fear of Missing Out)と呼ばれている。こちらに比べて過小評価されがちな対義語、JOMO(見逃す喜び:Joy of Missing Out)と混同しないよう注意が必要だ。

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