セレブ男性とアジア女性のカップルが増える背景 ハリウッド受賞式でパートナーへの愛を語る場面も

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一方で、アジア系女性に関してはいわばベテランなのが、ニコラス・ケイジ。最初の妻(パトリシア・アークエット)と2番目の妻(リサ・マリー・プレスリー)は白人だったが、12年続いた3番目の妻アリス・キムは、ロサンゼルスのレストランでウエイトレスをしていた韓国系アメリカ人。ラスベガスで電撃結婚するも後悔して4日後に結婚無効を申請した相手エリカ・コイケと、2021年に4度目の妻として迎え入れたリコ・シバタは日本人だ。

シバタとの出会いは、園子温監督の『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(2021)。もともとメキシコで撮影するはずだったこの映画は、園監督の病気のせいで舞台を日本に変更することになったもの。その現場にエキストラとして呼ばれた大勢の若い女性のひとりが、シバタだったのだ。英語の映画が日本で撮影されることはあまり多くないが、その珍しいことが起きたおかげで生まれた愛だといえる。

主演スターとエキストラのロマンスは稀ながら、そんなふうに日本をはじめアジアの国でもっと撮影がなされるようになれば、あるいは、アメリカの映画、テレビ、配信作品でアジア系の活躍が今後も増えていけば、アジア系と別人種のカップルもまた増えていくのではないか。

アメリカのエンタメ界で存在感が薄かったアジア系

そう遠くない昔、アメリカの映画やテレビでアジア系を見ることはめったになかった。カメラの後ろでも、存在感はあまりなかったものだ。しかし、ハリウッドが多様化に向けて真剣な努力を重ねるようになったおかげで、少しずつアジア系にもチャンスが与えられるようになってきた。

そんな中で、アリ・ウォンのように、コメディアンになるだけでも珍しいのに、作品をヒットさせて数多くの賞を受賞するというアジア系女性が出てくるようになったのである。

一番大事なのは、そこだ。アジア系が、メジャーな場で、もっと実力を発揮できるようになること。好きな仕事で優れたことをやってみせる人は、男性でも女性でも魅力的だ。誰が誰と付き合おうと自由だが、そんなふうに輝いた結果、思いもしなかった特別な人の心をつかむことになったとあれば、素敵ではないか。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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