インフレ下でも、あの商品がバカ売れする理由 これからの時代のヒットにつながる共通点とは?

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コロナ禍で買い手の気分をアゲることで大ヒットした商品に「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」があります。販売スタートは2021年4月。コロナ禍で外に飲みに行きにくい状況も追い風となり、発売直後から話題が沸騰。わずか2日で、一時的に出荷停止となるほど人気になりました。

「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」のキャッチコピーは「まるでお店の一杯目!」。缶フタをフルオープンできるようになっていて、パカッと開けるとふわふわの泡が自然に湧き出てきます。飲み口が大きく開くので、まるで生ビールのジョッキのように飲めるというわけです。缶ビールなのに、まるでお店の生ジョッキのように楽しめるスーパードライ。

湧き上がる泡が気分をアゲて大ヒット

開発チームがこのアイデアを思いついたのは、消費者へのインタビュー調査で、「家飲みもいいけど、本当は家でお店の生ビールが飲みたい」「缶ビールはお店で飲むビールと比べると、気持ちの盛り上がりに欠ける」といったコメントが寄せられたことがきっかけだったといいます。

とはいえ、ビール缶をフルオープンにするのも、泡をたたせることも技術的には難しいはず。なぜ、アサヒビールはこのような商品を開発することができたのでしょう?

実は「フルオープン蓋」と呼ばれるアイデアが生まれたのは商品化の約10年前でした。しかし消費者インタビューでは「泡が消えてしまったビールみたいでマズそう」と不評で、製品化には至らなかったといいます。

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また、開口時にクリーミーな泡を出すという技術も2017年に開発されていました。しかしこの時は、小さな飲み口から泡が見えるだけではシズル感がないとお蔵入りになっています。この2つの技術を掛け合わせることで実現したのが「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」なのです。

とはいえ吹きこぼれのリスクは高く、泡のコントロールが非常に難しい。こぼれそうな泡を見て気分がアガる、そんな圧倒的なワクワク感を実現するために、リスクがあってもチャレンジする。「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」が商品化できたのは、「お客様に驚きや感動を提供する」というアサヒビールのミッションによるところも大きかったのではないかと思います。

以上の事例から、気分が「アガる」というキーワードが共通項として見えてきました。みなさんもぜひ身近な商品・サービスの展開に応用できないか、チャレンジしてみてください。

川上 徹也 コピーライター、湘南ストーリーブランディング研究所代表

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かわかみ てつや / Tetsuya Kawakami

大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。50社以上の企業の広告制作や各種プロジェクトに携わる。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。中でも、企業の「哲学」や「理念」を1行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られ、現在は広告にとどまらず、「企業」「団体」「地域」などが本来持っている価値を見える化し輝く方法を、個別のアドバイスや講演・執筆を通じて提供している。著書は累計13万部突破の角川新書バカシリース(『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『こだわりバカ』)をはじめ計24冊。海外(台湾・韓国・中国)での出版も翻訳中も含め15冊を数える。

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