日本郵船の株主総会、原子力利用の方針変えず、LNG燃料船も「真剣に検討」

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 「放射能による汚染水の貯蔵に、日本郵船は大型タンカーで協力できないのか」という質問に対し、諸岡専務は「国から協力の可否を問われた。しかし福島原発周辺の海は浅く、大型タンカーでは近づけない。乗組員の安全も考慮し、結果的に実現できなかった」と説明。工藤社長は「引き続き協力できることは協力していきたい」と付け加え、大型タンカー以外での援助に前向きな姿勢を示した。

かねてから検討が進められている、原子力を動力とする新型船についての株主からの質問に対し、工藤社長は「引き続き検討を進めたい」とした。しかし、海賊による「テロ」(工藤社長)で船そのものが乗っ取られる危険性が高まることや、各国の港で原発アレルギーが高まっていることから、海賊被害を受けた際に寄港地に窮する可能性に言及。「時間軸は後退したと言わざるをえない」と、原子力船の実現が遅れるだろうとの懸念を示した。一方で、燃料費高騰や温暖化ガスへの対策としては、LNGを燃料とした新型船を「真剣に検討している」と語った。

10年に発生した海賊被害は、「ハイジャック」(諸岡専務)が49隻、未遂が445件。拿捕した船を母船としたケースが出てきており、被害はソマリア沖などのアデン湾にとどまらず、インド洋にまで拡がりを見せている。諸岡専務は、日本郵船の子会社である日之出郵船の船舶が海賊に遭遇し、乗組員が5カ月間拘束されたことに言及。現在、日之出郵船、東京船舶(同じく日本郵船の子会社)の東アフリカ航路ビジネスを停止していると明かした。航路停止による影響は「10億~20億円と見込まれる」(諸岡専務)。

諸岡専務は、「テロ緊急対策本部を設置し、ハイリスク船(速力16ノット以下で艦舷10メートル以下の船、LNG船や石油タンカー、ケミカル船などのエネルギー船、客船)についてそれぞれ個別に安全対策を講じている」と説明。武装した乗組員を乗船させる可能性について、工藤社長は、「法的整備が成されていないうえ、撃ち合いになった際に乗組員の無事を確保できない」と、消極的な姿勢を見せた。

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