日本の電機メーカーはCESで「ど派手演出なし」 韓国・中国勢を横目に新製品展示から距離置く

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そのほか、タイやアメリカ・シカゴ近郊で展開する「ロケーションベースエンタテインメント」についての展示も行った。それぞれの展示は最新技術を用いたものだが、ソニーがすでに顧客向けに提供しているものがほとんど。テレビやカメラといった消費者向けエレクトロニクス製品単体の展示はなかった。

振り返ってみると、2014年ごろはハイビジョンの4倍高画質という4Kがもてはやされ、CESでもソニーやパナソニック、シャープなど日系メーカーがこぞって最先端のディスプレーを展示していた。

「あの頃はみんなテレビの“薄さ”をどうやって見せるかに必死だった」。ある日系メーカーの関係者はそう苦笑いする。いかに魅力のある新商品を開発・展示できるかが焦点となった時代だった。

しかし、この10年間でコロナ禍も経験し、日本のメーカーを取り巻く状況は様変わりした。テレビを中心とした消費者向けエレクトロニクス製品の分野では中韓勢との価格競争で大敗。ブランド力ではアップルやグーグルなどアメリカの巨大テックに太刀打ちできなくなった。

CES2024
ソニーのブース。来場者が実際にそれぞれの技術に触れ、体験できるように工夫されている(記者撮影)

結果として、日本の電機メーカーのビジネスは個人向け中心から法人向けへと大幅な舵取りの変更を迫られており、ソニーや日立製作所などビジネスモデルの転換に成功した企業から収益性が改善してきている。CESで日本企業に消費者向けの新製品展示がほとんどなかったのは、こうした理由からだろう。

今は受け入れられなくても地道に

日本企業のように自社が法人向けに提供するサービスの体験や、環境保護への貢献を示す展示のあり方は、今後海外のメーカーにも広がっていくのだろうか。

別の大手日系メーカーのブース設計担当者は、「環境対応ができない企業はこの先淘汰されると思っている。今はまだアメリカで受け入れられなくても、地道に何度も展示することで認知度を上げていきたい」と話した。

豪華絢爛な新製品展示とは一線を画し、環境やサステナビリティ、インクルージョンという新しいテーマに重点を置いた日本企業の展示が「先進的だった」と評価される日は来るのか。それとも派手な展示にかき消されてしまうのか。来場者の目利きもまた試されている。

梅垣 勇人 東洋経済 記者

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うめがき はやと / Hayato Umegaki

証券業界を担当後、2023年4月から電機業界担当に。兵庫県生まれ。中学・高校時代をタイと中国で過ごし、2014年に帰国。京都大学経済学部卒業。学生時代には写真部の傍ら学園祭実行委員として暗躍した。休日は書店や家電量販店で新商品をチェックしている。

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