能登半島「世界農業遺産」ブランド復興の行方 伝統と独特の景観が地震で大きな被害

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水揚げ関連の共同利用施設でも断水、浸水、冷凍冷蔵施設・選別機・倉庫崩壊など26カ所で被害が確認されている。こうした状況では、とても漁どころではない。海底隆起で座礁の恐れも危惧されている。暖流と寒流が合流する「潮目」と呼ばれる好漁場がある能登の海域では、のどぐろ、ふぐ、ブリ、ズワイガニ、甘エビ、アワビなど年間200種もの魚介類が獲れる。だが今は出漁さえできない状況が続いている。

「過疎地」からの脱却を目指して取り組んできた「世界農業遺産」ブランドを活用した地域活性化構想はいま、最大の危機に瀕している。一部では能登半島地震の被害額予想8121億円といった数字も出ているが、被害額以上に地域の人々のモチベーションや居住意思に与える影響が心配だ。

人はもとより土までも優しい

能登には古くから「能登はやさしや土までも」という言葉がある。人はもとより土までも優しいという風土を表すとともに、能登の人々の素朴さ、温かさを表しているという。

10日の記者会見で馳浩知事はこの言葉を引きながら、「能登にお住まいをし、伝統と歴史と文化をつないでいた方々の思いを込めた創造的復興が必要」と訴え、そのための「SDGsの考えを徹底的に取り入れたい」と語っていた。

従来型の原状回復ではなく、「能登の里山里海」という世界農業遺産のブランドを踏まえた「創造的復興」によって、1日も早く立ち直ることを願うばかりだ。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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