耕作放棄地でソバや大豆の有機栽培を行い特産品を開発したケース、年間1万2000人(うち外国人1700人)が訪れる農家民宿群の運営、移住者による茅葺屋根の材料である茅の生産などの事業が繰り広げられ、世界農業遺産を活用する形での観光客誘致や、景観保全、循環型農業の継承などに結び付いた。
このほかにも世界農業遺産のブランド化、金沢大学が行っている「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」という人材育成、電気自動車での快適ドライブを目指す「能登スマート・ドライブ・プロジェクト」など、さまざまな取り組みが行われてきた。
2021年には国内すべての農業遺産認定地域が加入した「農業遺産認定地域連携会議」が発足。昨年11月には「能登の里山里海」世界農業遺産活用実行委員会の主催で、和倉温泉で「農業遺産シンポジウム」が開催され、能登地域2校を含む認定8地域11校から26人の高校生が参加し、意見交換会を踏まえて農業遺産の保全・活用に向けた「農業遺産ユースアピール in 能登」を発表した。次代を担う若い世代からのアピールということで、意義深いものがあった。
美しい棚田に亀裂
こうした能登独自の取り組みを展開していこうという矢先に大地震に見舞われてしまったのである。その被害は極めて深刻だ。
「能登の里山」の象徴で国の名勝にも選ばれている輪島市の白米千枚田(しろよねせんまいだ)。約4ヘクタールの範囲に約1000枚の小さな棚田が展開する。
地震直後、付近を通る国道249号は道路のひび割れや土砂崩れなどにより至る所で寸断された。展望台から千枚田を見渡せる人気スポットの道の駅には、観光で訪れた県外からの客などが孤立し車中泊を強いられていた。美しい棚田には無残な亀裂が多数入っている光景が報じられている。
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