さきほどの、野球の例で言えば、なぜメジャーに行きたいのか、メジャーで何がしたいのか、そのためにはどんな技術が必要なのか、そこに今の仕事がどう関連するのか、という理由づけだ。
クライアント(顧客)に対して、「理由はいいから使ってください」と説明する営業は皆無だ。外部に対しては当たり前のようにやっていることを、新人に対してもすることが求められるようになっているだけなのだが、意外と社内向けだと難しいのだ。
「ガラスの優等生」は打たれやすい
2つ目の新人は、「優等生」タイプ。明確にやりたいことはない。そつなく、まじめに言われたことはやるのだが、そんな人が、突然、辞めてしまう。
最近のケースを出してみよう。大手メーカーの営業の新人、田中洋介さん(仮名)は、配属早々、落ち込んでいた。「早く成果を出したいのに、なんか空回りしている。このままだと会社に迷惑をかけることになるし、実際にそうなっているんじゃないだろうか。しかも、他部署配属の同期の佐藤は、小さい話かもしれないけど、『筋がいい』とかいわれて、早速成果を出しているのに……」。
学校の成績は優秀だったのだが、実は、失敗の経験がほとんどないので、「失敗したくない」「レールから外れたくない」といった心理に陥り、焦る。すぐに横との比較をしたがる。新人の数カ月など、実は長い社会人生活から見ればまだほんの一瞬なのだが、ちょっとした差に一喜一憂し、すぐに落ち込む。ちょっとしたストレスを抱え込みがちで、こうした「ガラスの優等生タイプ」は打たれ弱い。
ここでよくある失敗は、「何かあれば、相談してこい」というケースだ。実は、そう言われても、この段階では、明確・具体的に課題があるというほどでもないことが多い。新人は先輩社員からどう思われるかの評価が気になっており、なかなか気軽に相談できないものだ。そもそも、「気軽に相談できるタイプ」だったら、こうした問題は生じない。
さらにはこんなケースもある。先輩がこぞってアドバイスをする。「こうしたほうがいい、これもやったほうがいい……」と各人は「よかれ」と思ってアドバイスするのだが、これが結果として本人の「逃げ道」をふさいでしまうのだ。追い込まれた本人は、自分はこの会社ではやっていけないんじゃないか、と思い詰め、退職になる。
筆者の経験で行くと、上述のように、このタイプの新人は見かけ上は平静を装っているのだが、周りに相談できずに抱え込んでしまうのだ。「一線」を超える前に、上司から声をかけ、早めに悩みを汲んであげることが必要だ。
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