政争の続くタイで7月3日に総選挙実施--日本人駐在員やその家族の安全をいかに確保するか?
2006年2月に親タクシン首相(当時)派と反タクシン派双方の大規模な抗議集会が開催され、両派の対立は決定的となった。タイの政権争いは爆弾や銃撃などを伴い、日本人の想像をはるかに超えた危険なものである。
昨年3月から5月にかけては、タクシン派の反独裁民主戦線(UDD、赤シャツグループ)が、総選挙を経ずに発足した現政権の早期解散・総選挙実施を要求して首都バンコクで繁華街を不法占拠するなど大規模な抗議デモを展開。何者かが夕方の帰宅ラッシュ時のオフィス街に迫撃砲を打ち込む事件まで発生した。
政府が武力による強制排除に乗り出したことで市街戦に発展し、最終的には死亡者数約90人の大惨事となった。取材中の日本人カメラマンも銃撃され、亡くなっている。
そのタイで来月7月3日、07年12月以来、実に3年半ぶりとなる総選挙(日本の衆議院に相当する下院の解散総選挙)が実施される。在留邦人の間では選挙実施に伴う治安悪化について不安の声が上がっている。
選挙後の「何か」に注意
「まず選挙戦そのものに対する妨害は考えにくい。国民の大半がその実施を望んでいる」と話すのは、在タイ日本国大使館の岩崎敦志政務参事官。今回の選挙は、ここ数年続くタクシン派と反タクシン派の対立に決着をつけるものとみられており、国民の関心はいつになく高い。今月2日に受付を終了した在外投票の登録者も14万人超と前回比で8割増となった。